カテゴリ:映画・ドラマ( 614 )

『トニー滝谷』

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なんだか久しぶりに、心地よいけだるさというか脱力感というか、エンドクレジットを見ながら、このあと誰とも話をしたくないなあと思いながら、ボトルに手を伸ばしていた。

告白すると私は、村上春樹が苦手である。「羊をめぐる冒険」の読後感の悪さはたぶんこれまで読んだ小説のなかでも最上位にランクされると思っている。以来、彼の書く本がどれほど売れても、ノーベル賞の話題が出ても、私は彼の作品に手を伸ばさなかった。誤解してもらっては困る。村上春樹が嫌いなのではない。ただ苦手なだけである。あの文章が。あの文節の切り方が。近づきたくない。ごめんなさい、あっち行くねみたいな感じなのだ。

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その村上春樹氏の作品をもとにした映画、『トニー滝谷』はなぜかとてもよかった。西島秀俊さんの投げやりなぼそぼそとした「こんなしゃべり方でええのんかおい!」っていうナレーションが、なんだか不思議に、映像といい具合に溶け込んで、なじむのだ。

イッセー尾形、宮沢りえ。それぞれの二役はさすがの好演で。

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・・・くだくだと説明するのが無粋に思えてきていけない。とにかく私はこの映画が好きだ。モノトーンの画質。ピアノの旋律。風に揺れる髪。好きな人は大好きになれるだろう。そうではない人には途中で停止ボタンを押したくなる、退屈な映画だろう。

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そういう映画こそ、映画と呼んでいいんじゃないのか?

雨の日の午後、窓を閉め、カーテンを引き、ドアには鍵を掛け、薄暗い部屋の中、一人でぼんやり見るのが吉。西島くんに朗読をしてもらってるような心地の中で見る映像は、不思議な感覚でもって、脳の中で処理される。

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脳が疲れる映画を観た気がする。いい感じに。
あとは寝るだけだ。


gonbe5515





by starforestspring | 2019-01-18 13:57 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『カメラを止めるな!』

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世間ではなんだかすごい評判になっていて、我も我もという勢いで人が押し寄せ、上映期間も延長され・・。で、DVDレンタルが始まり、案の定ひっぱりだこでなかなか順番がまわってこず、一昨日ようやく観ることが出来ました。

おもしろかったです。想像していたのと全然違っていたけれど。(想像と違っていたのは、私の想像が的外れだっただけで、作品に罪はありません)映画はゾンビ化した青年とその恋人とのシーンから始まり、そこからワンカットでラストまで。そしてカレンダーは1か月さかのぼり、映画が作られるに至った背景が語られ、実際に撮影している現場の様子が写されていきます。

私たちはまるで、映画撮影に立ち会っているスポンサーのお偉方さんみたいに、なにもせずただその現場を・・・カメラに映らないところで血のりを付けたり、ちぎれた腕を放り込んだり、壊れたクレーンカメラの代わりに人間ピラミッドを作ったりのスタッフたちの奮闘を・・・眺めているみたいなものです。


面白い構成だった。特に最初にワンカットを最後まで見せといて、謎解き式にカメラに映らないところを見せていくことで「ああ、あのときのあれは、こういうことがあったからだったんだ」ということが次々にわかっていく面白さ。そのたびに笑える快感。ヒロインと青年の演技を怒鳴り散らしたときのセリフが、監督の本音のまじったアドリブだったとわかったときには大笑いさせてもらった。

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映画を観てるときは、まるでそれが実際の撮影の様子のように思えたのだけれど、後半に見せられたワンカット撮影の時に走り回っていたカメラさんやメイクさんたちは女優さんたちで、本物の裏方さんではない(一部本物のメイクさんがまじっているけど)。女優さんたちの動きはあくまで演技である。いやいや、プロの裏方さんたちの動きは、やっぱり素人とは違いますぜ。エンドクレジットの後ろに流れていた映像で、本物の裏方さんたちを写していたけれど、そこに映っていた動きの鋭さ、緊張の中の余裕!(カメラを回しながら紙コップの水を二杯飲むカメラマンさん、走りながら俳優さんに腕を取り付け、血のりを塗る小道具さん)

それでもヒロインに血のりを吹き付けるスタッフ役の女優さんの真剣な様子や、カンペを出すときの訴える眼差しなんかは、本物もかくありなん・・だろうと思う。

去年、三谷幸喜さんの『大空港』と『shortcut』という作品を観た。あの時はフレームに映るものしか見ていなかったけれど、あのフレームの外でもこんな風にスタッフが飛び回っていたのだろう。それを思うと、これからは裏方さんたちの奮闘とご苦労を思いつつ、心して作品を観させてもらうことにしよう、そう軽く心に誓った私である。

そうそう、しゅはまはるみさんと真魚さんという、ステキな女優さんとの出会いを作ってくれたことにも感謝しなければ。

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この映画を観て、「つまらなかった」と否定する人はそれほど多くはなかろう。私も誰かに聞かれたら「面白いから観といたほうがいいよ」と言うつもりだ。だけど、私自身はもうお腹いっぱい。私にとってこの映画はもう、出口への道順がわかった迷路や、解読出来た暗号のようなものだ。だからと言って作品の評価が下がるわけではない。

まだご覧になっていない方はぜひどうぞ。愉快な時間を過ごせること疑いなし。


gonbe5515





by starforestspring | 2019-01-17 13:51 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『大阪物語 おぼえがき』

正月早々、『映画監督市川準』という本を書店で見つけた。『大阪物語』のところだけ立ち読みしたら、とても面白かったので、早速図書館で借りた。一昨日昨日と寝る前に読んでいる。監督市川準を知りたい人には、探していた答えをあちこちで見つけることが出来る本ではなかろうか。

全部読んだら、買うことになりそう。

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『大阪物語』をご覧になっていない方にはなんのことやらな記事になるだろうことを承知の上で、本日の記事とする。なんかね、これやっとかないと、呪縛から逃れられない気がして。

「おとうちゃんもう帰ろうやあ。なあ、おとうちゃん!もう帰ろう・・」

ちーちゃんをおんぶして飲み屋を探し回っていた若菜が、酔いつぶれて寝てしまったおとうちゃんを見つけ、起こそうとしてかける言葉。娘の、父親に対する、複雑な思いを、池脇千鶴さんはこの言葉に込めた。


「おとうちゃん、カスか?」
「カスや。・・・・しぼってもなんも出えへん」

このやりとりのシーンが、私をこの映画にのめり込ませた。おとうちゃんと若菜、そして奥にちーちゃん。後ろからの撮影。外の明るさが届かない室内の薄暗さをそのまま映像として見せることで、監督はこのシーンを物語のジャンピングボードとしたように思える。

「おとうちゃんは、消えた」

叫ぶでもなく、泣くでもなく、淡々と事実をを言葉にする若菜。


「それからひとつきして・・・・・・」

“・・・・・・・・”の部分は、これから映画をご覧になる方のために伏せておくことにする。

「まっすぐ目ぇ見て言わはんねや。目ぇ見てる間は本気なんや。・・・ 外すとな、他のこと考えてはんねん

しょんべん臭いガキんちょにはわからない、男と女の不思議な関係を乗り越えた母、春美がつぶやくこのセリフが切ない。


「・・・・ま、ハイテクやな。」
「アハハ!・・・アホやなぁ」
「・・・まぁな」

大阪の女のたくましさ。笑って受け止め、ツッコミを入れる少し大人になった若菜。もしこのシーンがなかったら、この映画はもっともっと辛気くさい映画になっていたように思う。

ジャンピングボードの前と後では、全く違う映画のように見えるこの作品。大阪の、芸人の娘として生まれた若菜が、大人の世界に戸惑い、子供同士の世界で自らを見つけ、昨日までとは違う自分になっていく。ラストシーンの若菜は、同じ風に吹かれていても、オープニングシーンの若菜とは別人だ。

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いい映画なんです。
市川準さんは、いい仕事をこの世に残した。ありがとうございます。


gonbe5515



by starforestspring | 2019-01-09 13:45 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『大阪物語』再び

DVD化された『大阪物語』を観た。この映画をDVDにして下さった方々に感謝する。画像がより鮮明になり、同時に物語も輝きを増した。

市川監督は、撮り始めてすぐに、いや、もしかしたらその前に、14歳の池脇千鶴の魅力に気づいていたのではないか。透明な瞳、強い意思を感じる口元。物憂げな眉。とろける笑顔。この映画を撮ってもらったことは、女優池脇千鶴の生涯の財産になるに違いない。

父、隆介の放蕩。そして失踪。夏休み、父を探しに旅に出た若菜が、夏の風の中で広い世界を知る。

市川準監督が作る作品の特徴である街の風景が頻繁にカットインしてくる。その個性になじめない方もおられると思うが、私はそのカットインの時に様々なことを考える。この後の展開を予想する。通り過ぎたシーンを思い出す。その風景に隠された監督の想いを想像する。

「アンタみたいなしょんべん臭いガキんちょにな、男と女の話がわかるか!」若菜のこの叫びは、無神経な友人に対してと同時に、両親の行動を理解しようとしても理解できない自分自身に向けてのものだったのだろう。14才のヒロイン若菜が、その澄んだ目で見る大人の世界に、私は自分自身が見てきた世界を重ね合わせる。


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少女が大人へと脱皮するその直前だったのだろう。自転車をひいた変なおっちゃん。「なにも変なことせえへん」と言いながらホテル街への道に連れ込もうとするサラリーマン。サンドイッチ屋さんをやりたい若くて可愛い子。 それぞれの出会いのその向こうにあるもの。それらを引きつけてしまうものを持った自分自身。夏休みにトオルと一緒に歩いた大阪の街で、若菜は子供を卒業したのだ。

父、隆介の葬式 で、元妻春美は思い出話をしながら漬物を食べる。ボリボリという大きな音を出しながら漬物をかじる。そして泣きながら隆介のために買った墓の絵を若菜に見せる。

若菜が問う。
「この赤いのは何?」
「センサーや」
「センサー?」
「ここのな、真ん中に線香立てたらな、反応してな、スピーカーから春美隆介の漫才流れんねん。・・・・ま、ハイテクやな。」
「アハハ!・・・アホやなぁ」
「・・・まぁな」


振り回され続けた隆介の死によってつきものがおちたような春美。同時に寄る辺を失った悲しみ。とにかくこのシーンでの田中裕子の演技が、しみじみといい。

隆介が、知人に送った暑中見舞いに大きく書いた俳句。「夏が来て 短いスカート 風よ吹け

アホやなぁ。ほんまにどうしようもないアホや。・・・泣けてくるわ。


gonbe5515

平成30年の最後の日に、この映画について書けたことを幸せに思う。




by starforestspring | 2018-12-31 16:11 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『buy a suit スーツを買う』

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昨日、市川準さんの遺作『buy a suit スーツを買う』を見た。市川さんらしい風景の点描を多用した不思議な映画。

撮影は家庭用ビデオカメラでやってるようだ。話をしている二人の、隣のテーブルに置いたカメラで撮影しているのがすぐわかるシーンがあるし、後を追いかけて撮影している映像がブレてたり。

映像から漂ってくる普通じゃない雰囲気は何だろう。カメラで言うところの望遠とか広角とかではない、単焦点レンズで撮影したような画がたくさんある。市川準監督作品という情報が作り上げてしまう思い込みだろうか。いいや、そんなことはない。監督が市川準さんでなければ、こういう作品は出来はしない。

この作品をどう捉えるか。どう解釈するかは観た人次第・・・ということなのだろう。

兄を探すために初めて東京にきた妹ユキ。兄の元先輩山口さん。数学の天才でありながらホームレスとなり、「俺らの周りはカスばっかりや」と毒づく兄ヒサシ。久しぶりに再会した東京に住む兄の元妻、トモコ。これ以外では妹と一緒に上京してきたスミちゃんと最後に出てくる“ある男”。出演者はこれだけ。それ以外に画面に出てくる人たちは、東京の風景と同化している大勢の人たち。(まさかこの人たちはエキストラではあるまい。)

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東京を写した映画。そしてたぶん、ヒサシのセリフは市川準さんの叫び。

なにがなんだかわからないうちに終わってしまう映画。エンドロールが出てきて慌てる映画。セリフのひとつひとつを思い出そうと焦ってしまう映画。不思議な映画を作られたものです。

やっぱり私は市川準さんが好き。

次はいよいよ『大阪物語』と再会します。Wao!


gonbe5515


by starforestspring | 2018-12-29 19:47 | 映画・ドラマ | Comments(0)

念願成就

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市川準監督作品、『大阪物語』がついにDVD化!しかもレンタル開始が12月26日から!

昨日、DISCASで“市川準”で検索をかけた結果のリストに『大阪物語』を見つけた時の驚きと喜びといったら・・いやあ、うれしかった。ついに念願成就。やっとDVDにしてくれました。長かったなあ。

私は昨日知ったけれど、調べてみたら11月21日に発売されていた。レンタル開始の直前にこれを見つけられて本当によかった。

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この映画以上に、大阪という街の空気を映像で見せた作品を、私は知らない。

「買うてえな、なあ、買うてえな」
「おとうちゃん、カスか?」
「うどんがおいしいさかいかなあ」

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池脇千鶴さんが10代のころ。沢田研二さんが今みたいに太る前。ミヤコ蝶々さんがまだご存命であったころ。恋焦がれたこの映画を、再びこの目で見られることに感謝している。手元に届くのが本当に楽しみだ。


gonbe5515

私は若いころからずっと尾崎豊さんの曲にはなじめずにいるのだが、この映画のラストに挿入される「風にうたえば」だけは別。これほど効果的な演出で、効果的な歌を選んで、効果的なタイミングで挿入した監督のセンスに恐れ入る。





by starforestspring | 2018-12-23 11:45 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『陽はまた昇る』

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西田敏行主演。渡辺謙。真野響子ほか。家庭用ビデオデッキ、VHS開発と販売までのメーカー技術者たちの苦闘を描いた映画。

私の知らないところでこんな戦いが繰り広げられていたんだなと思うと、まいりました!とお詫びしたい気分。でも、ビデオデッキに限らず、世の中のすべてのモノには、こういう話が必ずあるんだろう。そういう苦労も知らず、あたりまえのこととしてそのモノを使う私たち。いろいろ考えてしまった。


「易しい勝負に勝つよりも厳しい勝負に負ける方が人間を強くする。」
「山を登って何も見えなくてもいいじゃないか。最後まで山を登ることが大事なんだ」

これに限らず、しみる言葉がちりばめられていた映画だ。
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人が人を育てる。人に影響を受けて自分が変わる。私がサラリーマンになりたてのころ、確かにそういう風潮が残っていた。今の世においては、人を育てるということがないがしろにされつつあるような気がする。育てるより連れてくる。使い物にならなければ取り換える。使える奴はとことん使い倒す。縁の下の力持ちの苦悩に目を配らない。

かつての日本であたりまえだった雇用形態には悪い部分もあったろうけれど、だからといって欧米のそれが日本に向いてるとはかぎらないわけで。

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主人公加賀谷(西田敏行)の妻を演じた真野響子さんのたたずまいもよかった。昔のお母さん、女房ってこんな感じだったよなあと思う。今がどうこうではなく。


過ぎ去った昭和という時代を思い出させる映画。作り方にも、描かれる世界にも。


gonbe5515






by starforestspring | 2018-11-28 17:11 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『ステキな金縛り』

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なにを今さら・・・ではある。2011年公開の作品。観てなかった私はたぶん少数派。

三谷幸喜さん脚本・監督。主演深津絵里さん、ほか西田敏行さん、阿部寛さん、中井貴一さん・・。深田恭子さんもちょい役で出てた。ちょい役で出ててもすぐわかるところはさすが。それにしても芸達者、有名どころが大勢揃ってる。

『大空港2013』『shortcut』と連続して三谷作品を観た流れで鑑賞。思いのほかおもしろかった。娯楽作品としては上等の部類にはいると思う。

まだご覧になってない方が(そんなに多くはないと思うが)、もし興味をもたれてレンタルされたとき、昨日の私と同じような驚きと「へえええ!」と、クスッと笑えるシーンをちゃんと感じていただきたいので、ちょっとだけ。


まずオープニングクレジットがおもしろい。タイトルが出て初めて「ああ、なるほど・・」と腑に落ちる瞬間がたまらなかった。間髪を入れずファーストシーンに行くわけだが、これも絵画調の画面が実写のようになり(おそらくCG)。怪しげな洋館の中に入っていく一人の女性が階段をあがって二階にいくとそこには・・・そして・・・と、サスペンスタッチに盛り上げといて、次の瞬間、ヒロインの・・・に切り替わる。

なにこれ、おもしろいやん!と、大いなる期待を持たせてくれた数分でした。映画において、最初のつかみは大事です!


で、話は進んで、裁判が始まる。前代未聞の証人採用を裁判長に申請した弁護人もすごいけど、面白がってそれを許可した裁判官には笑った。

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2時間22分。時々画面にツッコミを入れながら、楽しく過ごすことが出来た。もう一度観たいか?と問われたら微妙なのだが、2時間22分を楽しく過ごせただけで私は充分満足だ。

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そして例のごとく調子にのって、この作品のスピンオフ『ステキな隠し撮り』も見てしまった。こっちは撮影方法が斬新。一見普通のように見えて、実は普通じゃない撮り方をした作品。こういう試みをやっていく姿勢は大したもんだと思う。(結果はどうあれ)

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重いテーマを取り上げて、人生を考えるきっかけになるような映画も好きだけど、単純明快、こむずかしいこと抜き!で、愉快に時間を過ごせる映画もまたいい。逆に「作った人はさぞかし楽しかったんだろうなあ」と、醒めた目で画面を見つめてしまう作品にあたるとがっかりだ。

途中、『スミス、都へ行く』『素晴らしき哉、人生!』が登場した。これまで見たたくさんの映画は、それぞれ「おもしろかった」「つまらなかった」「感動した」などという私なりの評価がつくけれど、この二作に対しては「観てよかった!」である。同じ作品を三谷幸貴さんがお好きなのであれば嬉しい。

ま、いろいろあるから、おもしろい。


gonbe5515







by starforestspring | 2018-11-17 13:24 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『大空港2013』 2

地方の空港のつくりは、みんなこんな感じなのだろうか。この映画(もとはWOWOW制作のドラマ)に出てくる松本空港は、富山空港に雰囲気が似ている。ロビーの様子、売店、案内カウンター、レストラン(という名の食堂)、
そっくりだ。

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とにかくこの映画は竹内結子さん。『天国の本屋』←名作!『いま、会いにゆきます』『サイドカーに犬』などが印象深い彼女の演技に見ほれる。1時間40分、画面の中央、端っこ、あるいは遠くのほうにいる彼女の存在が、この映画をひっぱっているのは間違いない。

ネタばれになるので詳しくは書けないのだが、田野倉家の6人は、それぞれ秘密を持っている。空港での待ち時間の間に、それがすこしずつ明かされていくドキドキ感。いきなり携帯に向かって叫びだす長男の睦夫のアブナイ行動(あとでその理由は明かされる)。なによりケッサクだったのは、おじいちゃんのそれだが、その秘密が明かされるときの家族の様子がもうたまらない。とにかくおかしい。

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このシーンに限らず、この映画は画面に映ってるこっちの人、あっちの人を見落としては損をする。

強面スキンヘッドのおにいちゃんが、実は生け花の先生だったり、地味でいつもうつむき加減に歩いてる女の子が柔道の国体選手だったりという、「〇〇と思った人が実は・・・。」のパターンは、極端から極端に走る場合が多い。だがこの映画では、とりたてて特徴のない人が、とんでもない秘密をもっている。

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松本から東京まで飛行機が飛ばないなら、ヘリコプターをチャーターして戻ればいいじゃんなんて発想、私には絶対出てこない!

人のことは、見た目ではわからない。自分にとってあたりまえのことが、他人にはびっくりするような秘密だったりするのだ。普段一緒に仕事をしている仲間にも、私の知らないびっくりするような秘密があるのかもしれない。いや、きっとあるにちがいない。だって私にも、彼らが知ったらびっくりするに違いない秘密があるもの。

人は、他者から見ればみんな謎なのだ。

お互いがお互いをよくわからないまま、こういう人だろうと、自分都合の人物像を作って他者と関わる。そのことで社会は、かろうじて成り立っているではないのか。リアルをぶつけ合ったら、収まるとはとても思えない。

人は自分以外のことはわからない。だからこそ誤解が生まれるし、驚きがある。喜びもあれば落胆もある。そして勘違いや偶然が生み出す奇跡がある。

深読みしすぎかもしれないけれど、この映画を観て私が感じたことはそういうことだ。

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松本の青空が、狙ったのかと思うくらいはまってる。
脚本もすごい。演技もすごい。しかし、この映画の成功は、偶然が生んだこの青空があったればこそではないか。そう思ったりする。


gonbe5515




by starforestspring | 2018-11-14 13:20 | 映画・ドラマ | Comments(0)

『大空港2013』 1

映画監督としての三谷幸喜さんは苦手である。嫌いなわけではない。ただ、三谷さんは「この監督の作品なら・・」と安心して見に行ける種類の監督ではなく、ツボとドツボの両極端の作品を見せられる監督だからだ。おちゃらけてるとしか思えないような演技で私を怒らせることがあるかと思えば、お見事!と拍手してしまいたくなるセリフを語らせることもある。

よくわからん人だ。

そんなよくわからん監督の映画を観た。『大空港2013』
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ごく簡単に言えば、東京周辺の天候不良により、急遽松本空港に着陸した飛行機から降りてきた田野倉一家と、彼らがもう一度羽田に出発するまで、そのサポートを命ぜられたグランドスタッフとの、表と裏の顔をないまぜにしたほんの1時間40分の出来事を見せる映画である。

あえて“見せる”と書いたのは、この映画、ワンカットワンカメラで撮影されているのだ。最初にグランドスタッフ大河内(竹内結子)が登場するシーンから、最後、空港の屋上で大河内がカメラのフレームからはけるまで画面転換はない。

信じられない!と思ったけれど考えてみれば舞台はいつもこうだ。ただ、舞台なら立ち位置が少々ずれても、舞台の上に立ってる限りお客様からはちゃんと見えるが、映画のカメラだとそうはいかない。ちゃんとフレームの中に納まるには、そしてちゃんとフレームからはずれるには、綿密な立ち位置指定、タイミングの調整が必要なのだ。

それらを乗り越えて1時間40分を見せる。フザケた映画である。

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フザケてると言えば、『大空港』というタイトル。映画好きのおっさんが一番に頭に思い描くのは、懐かしの名優、バートランカスターやジャクリーンビセットが出てたあの映画だ。ところがこちらは(大河内によると)「一日に2便しか飛ばない」地方の空港である。回りは見渡す限り田んぼ!大空港の“大”ってどういう意味じゃ!

さらにフザケてるのは、羽田に向かう便なのだから、乗客だってそれなりの数いるはずなのに、映画に出てくる乗客は田野倉一家6人+2人だけ。ほかの乗客はほったらかしかい!

ホントにフザケた映画である。ようこんなの撮ったな。フザケた映画すぎて、グラスに手を伸ばすのも忘れて見入ってしまったじゃないか。

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今回はツボの組。



gonbe5515




by starforestspring | 2018-11-13 15:34 | 映画・ドラマ | Comments(0)


タベリストgonbe     よしなしごと残日録


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