楽しまない人たち。傍観する人たち。

携帯電話の登場は、街から公衆電話を駆逐し、スマホの登場は、人に恥という言葉を忘れさせた。

そしてもうひとつ、スマホの登場は、撮影を変えた。かつて写真を撮る、動画を撮るということは、技術と知識を必要とするものだった。撮影はプロの仕事だったのだ。金を払う対象であり、金を払うに足る仕事をしてくれるものだった。撮影対象の捉え方、フレームの切り方、対象との距離等々、アマチュアとは違う次元で事は行われていた。

ところがフィルムではなく、スマホで撮影することが多くなってから人は、とにかく撮る、とりあえず撮る、撮ってしまったあと考える。そんな風になってしまった。その行為自体が、羽のように軽くなったのだ。ねえ、そんなにやみくもにとって、そんなにテキトーにとって、そのあとその映像は、大切にされるの?

草津のパレードを見た。撮影し、アップしてくださった方には心からのお礼を申し上げる。

私がこれから申し上げることを、快く思わない方が必ずいらっしゃるだろう。だからと言って私は、ここに自分の気持ちを表すことをためらうつもりはない。

京都橘高校吹奏楽部のパレード。その周りに群がるスマホ撮影者たちに物申す。アンタたちは自分がどんなことをしているのか、その姿を映像で確認したことがあるのか?

ねえ、画面を見るより実物をみてはどうだろう。学校が休みの日にはるばるやってきて、演奏してくれている高校生たちに、称賛と感謝とねぎらいの拍手を送ってあげたらどうだろう。そんな手振れブレブレの、一週間だか二週間だかしたら、きっと削除されてしまうに違いない映像を撮ってる暇があったら、アンタ自身の網膜に、彼女らの姿を焼き付けたらどうだろう。小さい画面に映る姿より、手を伸ばせば届きそうな距離にいる彼女らの姿を見つめたらどうだろう。


パレードを見る者が、パレードを楽しんでいること。彼女らが一番喜ぶことはそれだと思うのだ。群がり、立ちふさがって彼女らの進行方向を塞ぐことを、アンタたちは恥ずかしいと思わないのか?

手に持ったスマホの小さな画面で彼女らを見て、あるかないかの穴から拾った貧しい音で彼女らの演奏を記録するくらいなら、現地に行く必要はないではないか。せっかくそこにいるのなら、等身大の彼女らが演奏している姿を見、空気を伝わって届く彼女らが紡ぎだす音を楽しませてもらうべきではないのか。

彼女らがそこにいるのに彼女らを見ていない。それはとても失礼な行為だ思う。アンタたちはそう思わないのか。鈍感なやつらだな!酸いも甘いもかみわけたおっさんであればこそ、彼女らに対する節度は持ち合わせるべきだろう。


はっきり言おう。アンタたちの姿は浅ましい。


沿道にいる人たちは、スマホの画面を見つめているか、あるいは無反応で彼女らを見ているか。手拍子をしたり拍手を送ったりしている人はごくごくわずか。ローズパレードを知る京都橘の悪魔たちには、とても不気味な状況に違いない。


この動画におけるパレード観覧者たちとの違いを比べてほしい。興奮と熱狂こそ、彼女らの演奏に対する称賛と敬意の表れ。そのことをこの動画は教えてくれる。


楽しまない人たち。傍観する人たち。_b0137175_11522967.jpg


それにしてもだ、草津ハロウィンの実行委員さんたちよ。もう少し広い道路の使用許可を取れなかったのか。片側一車線のうちのひとつだけを彼女らに歩かせ、そのすぐ横をクルマが通るとかありえないだろう。パレードをしている彼女らに向かってクルマが走ってくるなんて・・・。君ら自身が、彼女らのパレードを軽く考え、敬意を払ってないことが見え見えじゃないか。

楽しまない人たち。傍観する人たち。_b0137175_11522925.jpg
幸いなことに、京都橘の演奏、パレードを美しい映像、クリアな音質、見事なフレーミングで撮影してくださるまるでプロのような方たちが何人かおられる。そういう人たちのご厚意に甘えようじゃないか。手持ちのスマホで撮影するのをやめ、目の前を演奏しながら通っていく彼女らに声援を送り、拍手を送り、自分がいかに彼女らの演奏を楽しんでいるかを彼女らに伝えようじゃないか。

アンタが彼女らに対して持つその気持ちを、アンタ自身の行動で示そうじゃないか。彼女らに対する一番の気持ちの伝え方はそれだと思うのだ。


スマホを捨てよ、彼女らは目の前にいる。


gonbe5515









by starforestspring | 2018-10-29 12:05 | 京都橘 オレンジの悪魔たち | Comments(4)
Commented by 山国釣師 at 2018-10-29 16:25 x
はじめまして。
耳の痛い話ですね。というのも、実は私も昨日クサツハロウィンに橘を見に行った者なのですが、初生橘という事もあり(遠い県なので)初めてスマホで撮影してみました。
写真ではそこそこ遊んでいたものの、動画という物は一度も撮影した事が無く、取り敢えずスマホでどの程度撮れるのか試したくて撮影してみました。
結果・・・仰っしゃるとおりとても記念に残せる様なものは撮れませんでした。幸い、一脚とか自撮り棒とかを持っていなかったので、手を上にあげて画面を見ずに撮影していましたので、しっかり肉眼で橘を見る事も出来ました。
恐らく、もう二度と撮影する事は無いでしょう。
今後はいっその事全て撮影禁止にして、学校から指定の教育を受け、許可を受けた数名のカメラマンだけが撮影して、来れなかった方のために楽しんでもらうという形にした方が良いかも知れません。
実は今回、橘撮影では有名な方の側にいる機会があったのですが、一部には迷惑な方もいらっしゃいました。
私は、草津には縁も縁も無い人間ですので、橘の前の演技団体のお子様達の関係者が来れば、よく観られる様に前に行ってもらっていたのですが、(結果撮影は最後尾からになりましたが)、良く見える場所を橘撮影隊が独占し、出演者の関係者やご家族が観れない、撮影出来ないという状況でした。
撮影やパレードの安全管理等、まだまだ考えなきゃいけない事がたくさんありますね。
Commented by starforestspring at 2018-10-29 20:01
山国釣師さん、はじめまして。ようこそおいでくださいました。そしてコメント、ありがとうございます。

草津に行って、見てこられたのですね。うらやましい限りです。京都にいたころは、草津は隣町という感覚で、よく遊びに行ってたものですが、今ではすっかりご無沙汰です。

さて、パレードの様子、ステージの様子、教えて下さりありがとうございます。

> 許可を受けた数名のカメラマンだけが撮影して、来れなかった方のために楽しんでもらう
このご提案に一票です。節度を持って撮影することが出来ず、演奏や観覧の妨げにしかならないのなら、残念ながらこういう方法で対処するしかないと思います。
写真であれ、ビデオであれ、カメラというものは、構えていると周りが見えなくなり、我が身のすることが何にもまして“正当な行為”に思えてしまう道具ですから。

でも、私が一番寂しかったのは、橘の生徒さんたちが一生懸命演奏しているのに、まわりにいる人がまるでお地蔵さんのように傍観していたことなのです。彼女らの演奏、ステップを見て感じていることを、声を出し、拍手をして表現する人がごくわずかでしかなかったことです。

お地蔵さん以外の人は、みんなカメラをのぞき込んでいる。Youtubeにアップされている動画で見るその光景は異様ですらあります。

今回紹介させてもらったRoseParade2018の動画は、私がこれまで見たRoseParadeの動画の中で、最も観客の様子が伝わってきたものでした。カメラに入っている観客の会話、「コンニチハ!」と、彼女らに声をかけている女性、大喜びで、友達と一緒に笑いあってる若者。そういう観客の姿を見て、彼女らは大きな力をもらい、長い距離(9km)を重い楽器を持ちながら、笑顔でステップを踏み、歩きとおすことが出来たのではないでしょうか。

「寺町京極」「ブルーメの丘」「長岡京」「酒呑童子」そして今回の草津。橘のパレードを見つめる人々の姿を見ていると、日本人はまだまだ、喜びを表現すること、楽しみを分かち合うことが上手ではないのだなと思います。あと20年もすれば、上手になるのでしょうか。そう願いたいものです。

長文、失礼しました。ぜひまた、コメントを置いて行ってください。お待ちしています。ありがとうございました。
Commented by 山国釣師 at 2018-10-29 21:11 x
リプありがとう御座います。
ローズパレードの件ですが、そのアメリカでも、前回(2012年)と比較すればスマホを構えた観客が大幅に増えた様に思います。実際、そのお陰で前回とは比較にならない程多くの動画を見る事が出来ているわけですし。
色々な動画に対するコメントわ見てみても、前回より反応が悪い!なんて声も聞こえてきますから、スマホも原因の一つなのでしょう。
さて、日本ですが、国民性の問題もあるでしょうが、ローズパレードとは規模も雰囲気も違い過ぎるので単純に比較は出来ないし、同じ様には出来ないと思います。
ローズボール自体お祭りですから、観客もある意味出来上がっている人達ですから。
日本で言えば、博多どんたくとか阿波踊りの中に入り、パレードする様なものです。
仮に橘が博多どんたくや阿波踊りの中でパレードすれば、ローズと同じ様に盛り上がると思いますよ。
ただ、撮影に関しては主様と似たような意見です。音楽に関しては、スマホじゃロクな動画は撮れません。ジャンルによっては、スマホだからこそ撮れる動画もあると思いますが。
どうせ良い動画が撮れないのなら、直接目で観て身体で感じた方が自身も演者も幸せになれます。
私も、取り敢えず著名な撮影者の動画がアップされるまでのツナギとしてYouTubeにアップしましたが、大御所の動画がアップされてきたのでそろそろ削除しようかなと思っています。
さて、次は日本最長パレードのガラシャ祭りですね。私にはあの距離を人混みを避けながら歩ききる自信がないので、動画を楽しみに待つ事にします。
Commented by starforestspring at 2018-10-30 11:11
山国釣師さん、おはようございます。

>ローズボール自体お祭りですから、観客もある意味出来上がっている人達ですから。
うまい表現をなさいますね。おっしゃるとおりだと思います。MLBのワールドシリーズやオールスターも同様に“出来上がっている”人たちばかりですよね。

ただ、農耕民族の特徴というか、日本人はふだんから自分の感情を素直に表現することをためらってしまうところがあると思います。周りの人たちに対して「照れる」とか「恥ずかしい」とかいうような。慎みとか恥じらいとかは日本人の美徳だと胸を張って自慢したい私ですが、今回のパレードのような機会には、もう少しはじけてほしいなあという願望が私にはあるのです。

はじけ過ぎて軽トラックをひっくり返し、その上で暴れるようなバカタレどもは論外ですが。

ガラシャ祭りは仕事で行けないので、動画のアップを今から楽しみにしています。きっとまた、大勢のおじさんたちがカメラをもって集まるのでしょうが、橘以外のパレードを無視して、橘だけに群がり、つきまとって、まつりを楽しんでいる沿道の地元の方たちに迷惑をかけるようなことがなければいいなと願っています。

そこはやっぱり、酸いも甘いもかみ分けた大人の節度に期待です。

名前
URL
削除用パスワード


川面を見つめて時の流れを知ったタベリストgonbe     よしなしごと残日録


by starforestspring

検索

カテゴリ

全体
雑感
それでいいのか日本人
国旗国歌についての私見
       
京都
映画・テレビ番組

サッカー
多部未華子さん
京都橘 オレンジの悪魔たち
       
お酒の話
思い出
食べものについて
韓国にまつわるエトセトラ
コミック名言集
サロメ計画『サロメ』
八尋計画『私を離さないで』
連続テレビ小説『つばさ』
映画『あやしい彼女』
北の国から
 
太宰治さん
川原泉さん
永六輔さん
 
男と女その摩訶不思議な関係
世界の中心で、愛をさけぶ
白夜行
連続テレビ小説 マッサン
連続テレビ小説 カーネーション
連続テレビ小説 あまちゃん
  
ディズニーランド
音楽
僕のマンガカタログ
時事
美術
USJ

Link

最新のコメント

sanaseさん、お久し..
by starforestspring at 07:20
その時間帯、どこにいらし..
by sanase2013 at 10:14
熊木さん、おはようござい..
by starforestspring at 05:50
正確には枚方市駅ですかね?
by 熊木 at 20:46
はい、呼びました!san..
by starforestspring at 19:13

記事ランキング

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月

ブログパーツ