伝承

小さい頃、親に言われたいろいろなこと。
「夜に爪を切るな」
「霊柩車に出会ったら見えなくなるまで手の親指を隠せ」

素読とおんなじで、意味もよくわからないまま、その言葉に素直に従っていました。
夜の爪切りは、“行動を伴わない行為”だけど、もうひとつのほうは、実際に親指を隠すという行為を行うので、何遍もやってるうちに、クセになってしまったような気がします。これ、周りのみんなもおんなじようにいわれてたみたいで、友だちと連れだって歩いてる時に向こうから霊柩車がくるとみんなが一斉に“ギュッ”と握りしめ、お互いに顔を見合わせて笑ってしまったこともありましたね。まあ、なつかしい思い出です。

私はこれを、親が死ぬときに、自分がなにかの用事で立ち会えない・・そんなふうに信じていたのですが、どうやら違うらしいんですね。私自身の身になにかが起こって、親より早く逝ってしまう。つまりは親の死に目にあえなくなる。そうならないためのおまじないだということを聞いたことがあります。

そうだったのかと。
夜に爪は、電気がなかったころ暗い中で爪を切ると、深爪したり、他のところを切ってしまったりするから・・・ということだったと思います。
両方とも子供の身を案じた言葉なんですね。



嵐山にある法輪寺というお寺へのお参り『十三詣り』
『知恵詣り』とも言います。数え年十三才の男女がお参りに行きます。
七五三とか成人式とかと同じ京都の子供の『通過儀礼』ですね。

で、そのお参りの時に、親が子に言うのが、「お参りして、お寺を出て、渡月橋を渡りきるまで振り返っちゃいけない!」というものです。
お参りすると、お寺のご本尊さまから『知恵』をいただけるのですが、渡月橋を渡りきるまでに振り返ってしまうと(お寺の方を向いてしまうと)そのいただいた知恵が落っこちてしまうからと。

3月から5月にかけて(4月13日の前後1ヶ月)渡月橋を歩いてると、お参りから帰って来る男の子女の子を時々見かけることがあります。京都を出る前、たまたまこの日に渡月橋を歩いてまして、大勢の子供たちの行進を観察してたことがあるのです。この子たちの表情が実に一所懸命なわけですよ。微笑ましいくらい。親がイジワルして前を行く子供に声をかけて振り向かせようとしたり。それに反応したら負けですから、子供も必死です。つい、振り返ってしまった子供もいると思います。一生うらまれるんじゃないですか?>親

この言い伝えも、子供に知恵がつくように、賢くなるように、賢くなれるから、そういう親の願いと子供を勇気づけたいという気持ちの表れのように思います。

伝承。
親から子へ、子から孫へ。
時を隔てて伝わっていくこういう言い伝え、風習が
これからもこの国にしっかりと残っていってもらいたい、そう願っています。


gonbe5515

親指を隠し続けたおかげか、たびたびこの身に降りかかる災厄をくぐり抜け、私は父を看取ることが出来ました。
by starforestspring | 2014-11-09 21:05 | 京都 | Comments(0)
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