『しのぶセンセにさよなら』

これまで私が読んできた関西弁で書かれている本は、桂文珍師匠の『落語的学問のすすめ』とか、桂枝雀師匠の『桂枝雀の落語案内』とかはるき悦巳さんの『じゃりンこチエ』とかがあります。関西で生まれた私にとって、これらの本を関西弁のイントネーションで読むのは面白くてしょうがなかったのですが、関西に住んだことがない、関西弁のイントネーションを再現出来ない人にとっては、どうなんでしょう?今は大勢の芸人さんたちが堂々と関西弁を駆使してTVなどに出演しておられますので、それなりに聞きなれていらっしゃるとは思うんですが、実際のところ、関西以外の人たちは、これらの本をどんなふうに読んでいらっしゃるのでしょう?

私はこれまでに太宰治作品で津軽弁、宮沢賢治作品で岩手弁(南部弁?)を見かけたことがありますが、やはり地元の方がそれらを読むのに比べれば、理解出来ていない部分があるように思えてなりません。なんて言うんでしょう、言葉のまわりにくっついている微妙な感情とか、雰囲気とか、文字のむこうに隠れてる空気感とか・・・・。

『しのぶセンセにさよなら』はコテコテの大阪弁で書かれています。
書かれていますが、細かいことは抜きで全然かまいません。言葉の違い、イントネーションの違い・・そういう部分を吹き飛ばしてくれるしのぶセンセとその他の登場人物たちとの会話は、関西弁をご存知ないかたもきっと楽しめることでしょう。

とにかくサクサクッと読める本です。正直東野さんの作品とは思えない。
『変身』『手紙』『秘密』『容疑者Xの献身』等々、ヒット作を連発しておられる人気作家ですが、まさかこんな小説も書いておられたなんて驚きです。
この本の巻末、「つづきはもう書かない」っていう意味のことを書いておられました。
時代が変われば作者も変わる、作者が変われば作品も変わる。当然ですよね。過去の作品に縛られることはないと思うし、過去から抜け出さないと未来はないと思うし、未来はすぐに過去になってしまうわけだし。。
東野さんにとって、『しのぶセンセ』を褒められることはもちろん嬉しいことには違いないだろうけれど、最新作を褒められることよりは嬉しくないんじゃないでしょうか。

そう考えると、この作品のドラマ化がよく実現したものだと思います。

先日のかわたさんのレポートの中で、多部未華子さんが「家の前に犬のフン置いて〜」ってセリフを喋ってると紹介されてましたが、あれは『しのぶセンセは暴走族』の中のセリフですね。この章は面白かったし、今回読んだ二冊の中に収録されているお話の中では一番ドラマ向きのように思います。教習所の教官に啖呵を切るところとか、車を運転してぶっとばすところとか、きっと面白いと思います。#しのぶセンセが運転する車はもちろんマーチでお願いしたい。

また、『しのぶセンセの上京』という章の中で、
「大阪の人の流れは滝だ、ぶつかり合いながら強引に流れる。でも東京の人の流れは津波。大きな力が巨大なうねりを作っている。」って一節がありました。二日間お気楽に二冊の本を読み続けてましたが、これを読んだときは思わず座り直しましたね。
うん、素敵な表現だと思います。

「ホームで電車を待ってる時、東京は整然と並んでるけど、大阪は電車が入ってくるなり我先にドアに殺到する」・・ってのには笑いました。この感覚は、実際大阪の駅のホームに立ったことのある人でなければわからないかもしれません。私は阪急電車をよく利用していましたが、阪急梅田駅での “並んでいる人” と “割り込みを狙う人” との間に漂う無言のせめぎ合いはすさまじいものでした。(JR環状線でのそれと比べればかわいいものでしたが)
今では少しくらいおとなしくなっているのでしょうか?

まあそんなわけで、しのぶセンセの本は楽しめます。
病院での待ち時間とか、サッカー観戦中のハーフタイムなんかで読むのにいいと思います。

そうそう、この本、なぜだかタイトルに“新装版”ってのがついてるのとついてないのと、両方売られてました。同じ講談社文庫なのに。
なんで?と二冊を手にとって比べてみたら、行の間隔の広さとか、フォントとかが違ってるんですね。表紙も違います。私は新装版のほうを買いました。そうでないほうのフォントが苦手だったので。それぞれの好みはあるんでしょうけれど、おもしろいことやりますね、講談社。


昨日今日としのぶセンセの活躍を読んで、このドラマと、きっと耳に心地よいであろう多部未華子さんの関西弁がますます楽しみになりました。しのぶセンセはソフトボール部のエースで4番だったという設定なんですが、さすがにソフトボールの試合はやってくれないでしょうねえ。
狭いまがりくねった路地を、ひったくりの犯人(小学生)を追いかけて疾走するシーンがあるんですが、ここは大丈夫でしょう。なにしろ多部さんですから。素晴らしい走りを見せてくれるに違いありません。

ホント、7月が楽しみです。

gonbe5515
by starforestspring | 2012-02-24 16:10 | | Comments(0)
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