歩こう、京都は。
京都は歩いて楽しい町だと私は思います。名所旧跡が多いという理由だけではなく、道の幅とか、家並みとか、すぐそこに見える背の低い山、大きすぎない川・・・。私はこれまで何度も書いてきていますけれど、京都を楽しむなら歩くのが一番なのです。京都の面白さは、駐車場をハシゴしていてはわからない、そう思います。
「清水寺や東寺、嵐山に行ってきました。二条城や金閣寺、平安神宮、南禅寺にも行ってきました。あ、そうそう、伏見稲荷の千本鳥居もきれいでした。今度行くときは、平等院にも行ってみようと思います。」と、土産物を配りながらご同僚やご近所の方々に報告するのがなによりの楽しみという方は、そういう楽しみ方を今後も続けられればよろしいと思います。それだって楽しみ方のひとつでありますし、なにより誰かの楽しみ方を否定するなんていうことは誰にも出来ないのですから。
私は私の思うところの京都の楽しみ方を、ちょっとつぶやいてみたい。
観光ガイドに載っているような場所、そういうところは旅行好きの方なら大抵行っておいでです。誰もが知っている“京都”をあなたも追認する、それで本当によろしいのですか?だとすれば、実にもったいないことです。誰も知らない、あなただけが知っている“京都”を見つけること、それがあなた自身にとっての京都になると思うのです。
京都へ行くなら、車での移動はおやめなさい。その足で歩き、「この先にはなにがあるんだろう?」という、不安と楽しみのはざまで揺れる心に鞭うって一歩踏み出す。その先に京都の面白さはあるのです。
50年前のある春の夕間暮れ。私は八坂から清水への道を一人で歩いていたのです。まだなにも知らない、わかっていない、気持ちだけが先走りする若造だったのですが、だんだん暗くなっていくその道をそぞろ歩きながら、私は私の住む故郷の美しさを初めて知った気がしたのです。
「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふひとみなうつくしき」
与謝野晶子さんのこの歌の意味のほんの先っちょを、私はその時わかったような気がしたのです。
遠い昔のことです。八坂神社、高台寺、霊山観音、二年坂、八坂の搭を右手に見ながら三年坂、そして清水坂へ。今は観光客が多くなりすぎ、肩をぶつけながらでなければ歩けない状態です。加えて食べ歩き、飲み歩き、座り込みを恥ずかしく思わない罰当たりな観光客ばかりです(国内国外を問わず)。嘆かわしいことこの上なし。
私はいい時代に生まれました。今の時代に生きる若い方々には、なんだか申し訳ない気持ちです。
gonbe5515
#
by starforestspring
| 2024-03-19 13:03
| 京都
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おうつり
前期高齢者・・この言葉は実に無機質な印象を受ける・・・となると、体のあちこちがおかしくなってくる。体が硬くなるとか、歯が減っていくとか、毛髪が抜けていくとか、持久力や瞬発力が衰えるとか・・・。一番困っているのは物覚えが悪くなること。なにしろ最近読み終わった本の題名が思い出せないし、好きな映画作品に出演していた女優さん俳優さんの名前が思い出せないし。記憶力は悪いほうではないと自認していたので、“思い出せないこと”に対する悔しさの度合いは、人並み以上ではないかと勝手に思っている。
60代に足を踏み込んだ頃、私は自分のことを老いたとは思っていなかった。60に入ったばかりで“老いた”なんて言ったら先輩方に叱られるに違いないのである。「おまえなんかまだまだ若造!」と、面と向かって言われたことも実際あるのだ。平均寿命が80を超える現代において、60過ぎというのはとても中途半端な年齢ではあるまいか。老人とはとても言えないし、さりとて若いなんて言ったら「まあまあ・・無理をなさって・・」などと、同情されそうだし。
そんなこんなで身の処し方をどうすべきかと考えることもたびたびなのである。
ところが、世間を見まわしてみたら、60超えたら立派(?)な老人扱いなのである。こっちの思惑などおかまいなく、自分がお年寄りに分類されていることに否応なく気づかされるのである。
たとえば「シニア割引」。私がいつも行ってる映画館は、60歳をこえると料金が割引され、一般料金が2,000円のところを1,300円で入ることが出来る。県内の温泉旅館やビジネスホテルにも割引で宿泊することが出来る。さらに、65歳を超えると、9時から17時までという制約はあるけれど、市内電車やバスを一回100円で利用することが出来る。普段なら670円かかるところが、100円で利用できるのである。これは実にお得ではないか。
私の“先輩方”の中には、年寄り扱いされたり、おじいちゃんと呼ばれることに、拒否反応を示される方がおられた。ちょっとしたことで手を貸そうとすると、「大丈夫!これくらい出来る」「オレはまだまだ若いんじゃ」とおっしゃる。「その意気や良し!」と申し上げたい気持ちと、「なにもそんなに突っ張らなくても」という気持ちとふたつ、私にはある。前期高齢者となって、自分の老いを少しずつだけど自覚するようになって初めて、私より年上の人たちの老いを想像出来るからだ。私が30代とか40代ならこうはいかない。
私は・・・“高齢者”、“老人”と呼ばれることを、素直に受け入れようと思う。だいたい、前期高齢者になっている私が「ワシはまだまだ若い!」と突っ張ってたら、本当に若い連中が困ってしまうではないか。それと、私は私なりに一生懸命生きてきて、日本国民としての三大義務(教育・勤労・納税)を果たしてきたという自負がある。国や自治体が、私たちのためにと定めてくれた優遇措置を甘受しても、まさか文句は言われまい。
私の人生、いいこともあまりなかったけれど、悪いことばかりでもなかった。人に対してひどい仕打ちをしたこともある。けれど私は私の知らないところで、なにかいいことをしてきたかもしれない。
2,000円の映画料金が1,300円になるとか、670円のバス代が100円になるとかが、私がこれまで社会に対して行ってきた行為のおうつりだとするなら、私はありがたく頂戴しようと思う。
gonbe5515
#
by starforestspring
| 2024-03-18 06:17
| 雑感
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私はタイムマシーンを持っている。
「トシを取ると、昔を振り返ることが多くなるけれど、それではいけない。トシを取るほどに今を考え、今に生きなければ」
ということを言う人がいたが・・・そうかなあ。どちらがいいとか悪いとかいう問題ではないと思う。昔を懐かしく思い出す人もいれば、思い出すのが辛い人もいる。今を生きることが辛くて、楽しかった昔に思いを馳せることで救われる人もいる。辛い昔があればこそ、今を生きることが楽しい人もいる。
ひとくくりには語れないでしょ?
前期高齢者に足を突っ込んだ私。昔を振り返って気づく。苦しかったこと、辛かったことはあんまり覚えていないのだ。楽しかったこと、思い出して少し笑えることなら、指をどんどん折っていくことが出来る。昔受けた傷がこれ以上深くならないよう、再び血がにじみ出さないよう、脳がバリアーを張っているのだと思う。
1960年代後半から、1970年代にかけて。私には思い出すのが辛い時代だし、同時に楽しい時代でもある。デロリアンがあれば、この時代にダイアルを合わせたいものだけど、それよりもっと手軽に飛んでいけるものを私は持っている。
吉田拓郎さんのアルバム『元気です。』
一曲目「春だったね」のイントロで、心はあの頃にひとっとび。
gonbe5515
#
by starforestspring
| 2024-03-17 10:39
| 思い出
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目下の悩み
「若いものがかぶれるもの。“サイモンとガーファンクル”、“太宰治”」
誰から聞いたか、どこかで読んだか、今も覚えているこの言葉。実に失礼な言葉だと思う。しかし、その両方にかぶれ、今に至るもずうっと愛してやまないおっさんがここにいるのである。実に偉大な存在だと思わないか?> 私がではない。サイモンとガーファンクルと太宰治が。
私のiPhoneの“ミュージック”には、サイモンとガーファンクルの曲が多数入っている。アルバムごとに曲をまとめたプレイリスト、特に好きな曲だけを集めたプレイリストがあり、昨日は特に好きな曲を聴きながら家の仕事をしていた。太宰治さんの本は、私の書棚に文庫本がずらっと並んでいる。筑摩書房の全集でないところが口惜しいのだが、言い訳をさせてもらえば、読みたい本を一冊ずつ書店で購入し、気がついたらこんなになってました・・・というところが自分では気に入っている。
で、私の目下の悩みなのだが・・・。
太宰治さんの作品に『碧眼托鉢』というのがある。新潮文庫だと「もの思う葦」に収録されている。ことごとについて、太宰さんが思うところを述べた短文を集めたもので、その中に
ーーーーーーーーーー
<生きていく力>
いやになってしまった活動写真を、おしまいまで、見ている勇気。
ーーーーーーーーーー
というのがある。私はちかごろ、この言葉の言わんとするところをしみじみ実感させられている。私の場合は、活動写真ではなく推理小説なのだが。
読み始めて一週間が過ぎた。まだ半分、200頁を過ぎたところである。平山さんのように毎晩寝る前に読んでいるのだが、10頁と行かないうちに寝てしまう。つまらないのではない。綴られる文章が、表現や言葉遣いやリズムが私に合わないのだ。嫌になってもうやめてしまおうと何度も思ったのだけど、ここでやめてしまうのは癪だし、負けた気分になりそうだし、とにかく最後まで読んでみよう、そのうち慣れてくるかもしれないし、などと、自分に言い聞かせて毎日ひいこら続けている。
<生きていく力になるかもしれないこと>
いやになってしまった推理小説を、おしまいまで、読み続ける勇気。
この作家にかぶれてしまった若者の、背中をひとつ、叩いてやりたいものである。
gonbe5515
#
by starforestspring
| 2024-03-16 08:03
| 雑感
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家康殿は何センチ?
旅行先にお城があるとかならず見学することにしている。お城を目当てに旅行先を決めることもある。大阪城、姫路城など大きな城には圧倒されるけれど、松本城のような小ぶりな城にもほれぼれする魅力がある。私の故郷京都にも二条城があるけれど、あそこはなんというかその、戦いに備える城ではなく、将軍家康殿の宿泊所であるからして、なんというかあまり、とげとげしいものを感じない。
お城によっては、鎧が展示されているところがある。素通り出来なくてじっくり拝見するのだけど、いつでもどこでも、その鎧の小ささに驚いてしまう。展示物を見る側の悪い癖として、どうしても今の時代の基準で見てしまうせいだろう。ふと思いついて、歴代将軍の皆様の身長はどのくらいだったのか知りたくて、検索してみた。そしたらなんと・・・。
一番背が高かったのが二代将軍徳川秀忠160㎝、一番低かったのは五代将軍徳川秀忠124㎝となっているのだけれど・・・124㎝?
まあなんにせよ、今の感覚で昔の人のことを推し量るのはよしたほうがいい。先日訪れた新潟県の「北方文化博物館」、そこに暮らしていたであろう140㎝ら160㎝くらいの人たちのことを想像しながら、鴨居の高さや部屋の広さ、縁側の幅などを見てみると・・・古の人たちの様子がなんとはなしに思い浮かぶのである。
当時を生きた人たちのモノサシでそこに立つ。もっともっとその場所を楽しむためにも。
gonbe5515
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by starforestspring
| 2024-03-14 05:37
| 雑感
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川面を見つめて時の流れを知ったタベリストgonbe よしなしごと残日録
by starforestspring
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