男の顔

黒澤明監督の映画について書いた本で読んだ話。
撮影助手を希望していたのに、手違いで俳優募集の面接を受けるはめになり、あろうことか合格してしまった三船敏郎さん。映画の出演依頼を受けたときに、その後
「男がツラでメシ食うなんて・・・とおっしゃったそうだ。発言の裏には父上から受けた教育の影響があるそうだ。また、氏自身の戦争体験もあったかもしれない。いずれにしろ、あのお顔立ちで、こんなセリフをおっしゃるなんて、粋な方である。ご自分の顔が美形であると意識した上でのことならこういうセリフはイヤミに聞こえるが、そんな風には決して思ってらっしゃらなかったはずだ。


私の父も、男が顔のことをとやかく言うのを嫌っていた。ハンサムだとか、ブオトコだとかという評価そのものを父は持ってなかったように思う。『男の顔は履歴書』『男は自分の顔に責任をもて』とも言っていた。誰の言葉の受け売りか知らないけれど、私は結構この言葉に影響を受けたのだ。

このトシになって父の言葉がよくわかる。毎日大勢の人と会うが、そのお顔立ちからのイメージと、お話をさせてもらってからのイメージとが全然違うということはそれほど多くない。

赤ちゃんの頃、少年時代、青年時代、成人、壮年、中年、老年。その時々によって、顔はずいぶん変わる。「加齢のため」とシンプルに理由付けなさる方もおられようが、私にはどうもそれだけとは思えない。顔は心の窓。歩いてきた人生を描き写したキャンバス。

父から学んだことのたいていは忘れてしまっているけれど、「男のくせに鏡なんか見てどうすんねん!」と、叱られた言葉は忘れずにいる。その教えのせいで、歯に青のりつけて学校に出かけた息子が大恥をかいたことを父は知るまい。

今どきの青少年たちには、こんなおっさんは時代錯誤もはなはだしいに違いない。でももし私に息子がいたら、「男のくせに鏡なんか見てどうすんねん!」と言うことだろう。父が私にそうしたように。


gonbe5515




# by starforestspring | 2017-06-12 18:08 | 雑感 | Comments(0)

身の置きどころ

6月3日に放映されたNHKの番組『祇園 女たちのものがたり』を見た。200年にわたって続いてきたお茶屋の8代目女将、 太田紀美さんを追いかけたドキュメンタリー。いろいろ考えさせられた番組でした。

番組のナレーター、若村麻由美さんがおっしゃってた、「選ばれし者のみが敷居をまたげる場所」っていう言い方には、内心カチンときたけれど、事実だからしょうがない。お茶屋遊び・・今の私には縁のない世界。

私に縁がない世界に住んでる人は、私の住んでる世界にもたぶん縁がない。そもそも、人として生きているうちに区別の基準となるものすべてが、人が住む世界を分類する素材となる。いいとか悪いとかではなくね。

私は私の住む世界に不満があるわけではないけれど、今の世界とは違う世界に対する憧れはもちろんある。普通のサラリーマンではなく、代々続いた老舗の跡継ぎであったり、裕福な家庭のドラ息子であったり、海外を飛び回る外交官の子どもであったり・・・。

それは憧れというより夢想であって、叶うはずのなかったもの。アン王女がいくら望んでも、ジョーと結ばれることがなかったように、ジョーがいくら望んでも、アン王女を手に入れることが出来なかったように。

分相応。

自分の分をどこに見つけるのか、それが人生を楽しむための近道かも。
そしてまた、生きる目標になりえるものかも。



gonbe5515



# by starforestspring | 2017-06-11 15:38 | 雑感 | Comments(0)

『ソロモンの偽証』第二部

第二部「決意」のちょうど半分くらいまで進んできた。
第一部はネタ振りとしておもしろく興味深く読ませてもらった。しかし第二部は、気にしないでおこう、気にしないでおこう・・と言い聞かせても気になってしまうところがあるので、どうしても集中出来ないでいる。

ある設定さえなければもっとのめりこめるのだ。

その設定というのは、第二部において、動き回り、会話を続ける登場人物が、全員中学生だということ。中学3年生15才。こんなに知識があるとは思えないし、こんなに大人びた話し方をするとは思えない。先生や弁護士、学校を辞めた主事さん・・そういう人たちが彼らを“大人扱いして”くれるとはまして思えない。裁判に必要な証拠を集めるために交わされる会話、弁護側検察側双方による公判前整理手続きのような話し合いで飛び交う言葉など、中学3年生が喋ってるとはちょっと信じがたい会話が延々と続く。

自分たちのクラスメイトの死の真相をさぐるため、真実をつかむため、大人たちにはまかせておけない、自分たちで裁判をやろう!これがこの小説の背骨だから、中学3年生という設定をはずすわけにはいかない。それは重々承知している。承知してはいても、「このセリフを喋ってるのは中学3年生、こんな中学生いないよ!」 ・・これが頭から離れない。こいつさえ頭の中から消えれば、私はもっと楽しめるはずなのに。


わかりきったことだけど、小説は現実と事実とだけの世界ではない。日傘を差して風にのって空から降り立ってくるナニーがいたり、河童の国があったり、赤鬼が泣いたり。「ありえねー!」と言いたくなる設定で書かれていても、その設定の上で私たちは笑ったり涙を流したりしてきた。


残り半分。『ソロモンの偽証』全巻を読み終えたとき、自分がどんな感情に包まれるか・・それを楽しみに読み進めようと思う。



gonbe5515




# by starforestspring | 2017-06-09 19:56 | | Comments(0)


タベリストgonbe     よしなしごとつづり


by starforestspring

プロフィールを見る
画像一覧

検索

最新のコメント

>ハリソン君 ご心配を..
by starforestspring at 08:52
何か気の利いた言葉をお掛..
by ハリソン君 at 23:07
>marrellaさん ..
by starforestspring at 16:11
>ストーリーそのもの..
by marrella at 11:58
>坂道G 調べてお..
by starforestspring at 21:02
>違う方 坂道G ..
by NABE at 18:41
NABEさん、おひさしぶ..
by starforestspring at 20:38
ここんとこ違う方に行っち..
by NABE at 18:56

カテゴリ

全体
雑感
それでいいのか日本人
京都
映画・ドラマ

お酒の話
思い出
多部未華子さん
サロメ計画『サロメ』
八尋計画『私を離さないで』
連続テレビ小説『つばさ』
映画『あやしい彼女』
 
太宰治さん
川原泉さん
永六輔さん
 
男と女その摩訶不思議な関係
世界の中心で、愛をさけぶ
白夜行
連続テレビ小説 マッサン
連続テレビ小説 カーネーション
連続テレビ小説 あまちゃん
  
ブラジルワールドカップ
ディズニーランド
音楽
僕のマンガカタログ
時事
食べものについて
美術
USJ

Link

記事ランキング

画像一覧

以前の記事

2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月

ブログパーツ

※この時計の時刻は、閲覧しているパソコンのものであり、必ずしも正確な時間とは限りません