カテゴリ:僕のマンガカタログ( 11 )

風雲児たち幕末編 再読

調べてみたら次の『風雲児たち幕末編 第25巻』は、来年1月末に発売だとか。
さっそくAmazonで予約しました。

先日本屋で立ち読みしてるとき、たまたま“桜田門外の変”について書かれたものを見つけまして。
桜田門の前で大老井伊直弼を待ち伏せ、襲撃した浪士たち。
この事件のことについて、幕末編で詳しく描かれていたことを思いだし、家に帰ってからその前後の部分を読んでいるうちに、幕末編第1巻から読み直したくなり現在17巻まで読了。

明治維新にいたる諸外国の日本に対する圧力、幕府の対応、外様列藩の動向、朝廷の様子・・・。
そういうものがギャグをまじえてわかりやすく描かれている。

ギャグをまじえて・・・ではあるけれど、マンガで登場した人物をwikiで調べてみると、風雲児たちで紹介されたまんまのことが書いてあったりするので本当に驚いてしまう。基本、史実に沿って描かれていることは間違いないように思う。
#作者の想像で描いてるところは、「想像です」なんて“みにゃもと氏”が注釈をつけたりしてる。

この『風雲児たち』『風雲児たち幕末編』のシリーズを中学高校の日本史の副教材に・・・というのは、以前からの私の主張だけれど、いや、本当に真面目に検討してもらいたいもんです。
大谷吉継・前野良沢・高野長英・渡辺崋山・大黒屋光太夫・・・
この人たちのことを中学高校で習った記憶が私にはありません。
でもこの人たちの人生がどれほど歴史を動かしたかを、この本で知ることが出来ます。

歴史は、そこに生きるひとりひとりの小さな力、つながり、積み重ねで編んでいかれるもの。
私はそれを、この本で知りました。

読み進むにつれ、驚きと感動に満たされる本なんて、そうそうお目にかかれませんよ。
自信を持ってお勧めできる作品です。

gonbe5515

川原泉教授の初期、中期作品も是非。
どれを読んでも面白い・・と言える数少ない漫画家の一人です。
絵が大幅に変わってしまった最近の作品(といってもブレーメンあたりから?)は・・・。
エッセンスは残っているにしても、初期中期の破壊力はなくなってしまいました。
 #破壊力=ネームの多さ
by starforestspring | 2014-12-26 18:31 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

ブラック・ジャック

先日、とある方のブログを読んでいて、どうしても『ブラックジャック』が欲しくなり、勢いにまかせて全巻をAmazonでポチッとしました。で、それが届いてからもう結構な日が経つのですが、残念ながらいまだに1巻の半分も進んでおりません。
毎日寝る前にベッドで読むようにしてるのです。
疲れてしまって開く前に寝てしまった日もありますが。。
でも、久しぶりのBJとの再会は楽しいですよ、やっぱり。

我が家にある手塚作品の、『火の鳥』と『陽だまりの樹』との違いは長さ。単純にページ数が多い少ないだけではありません。一話読む間のほんの短い時間で、読者をハラハラドキドキさせ、そして最後の一コマでストンと納得させてしまう。実にその、サービス精神にあふれた作品だと思います。

昨夜読んだのはBJの知り合いの船医が長い航海の途中日本に寄って、久しぶりの再会をするというところから始まるのですが、読み進むにつれBJと船医の関係を読者に“想像させる”エピソードがどんどん出てくる。そのため、読者にはこの二人がかつてどういう関係だったのかが自然にわかるんだけど、作品の中ではそのことについての正解は“明確には”提示されない。そういう話です。

恥ずかしながら私は、読み終わってから、船医の名前とエピソードに出てくる女性の名前との共通点に気づきました。推理とかサスペンスとかそういう大上段に振りかぶるわけではなく、ほんの少しひねってある。少年誌に掲載されていた作品ですから、あまり難しいのは描けなかったと思うのですが、それにしても子供だましに陥ってもいない。子供も大人も楽しめる作品になっているのがすごいと思うのです。


私はマガジン派でしたが、サンデーもキングもチャンピオンもジャンプも全部読んでました。たくさん読むことで、好きな作品、嫌いな作品の区別をつけられるようになったと思います。
ブラックジャックももちろん読んではいましたが、それほどのめりこんでいたわけではないのです。
でも今回全巻購入したことで、その楽しさおもしろさを改めて感じる機会を得たことは、幸いだったと思います。

勢いにまかせての“ポチッ”って、案外当たりが多いもんです。

寝る前に一話二話・・っていうようなペースではありますが、あせらずに読み進めていこうと思っています。


gonbe5515
by starforestspring | 2013-12-28 19:27 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『よしえサンち』追記

どうしても、よしえさんが亡くなったことを受け入れられない自分がいます。

須賀原先生の作品『気分は形而上』で、某保険会社計算課勤務の“実在OL”として登場していたよしえさんは、最初はチョイ役でした。ネタに困ったせいか、それとも存在そのものがネタであったせいか、彼女を作品に登場させた理由はわかりません。ただ、間違いないだろうなと思えるのは、“実在OL”を描くとき、須賀原先生のペンは他のキャラクターの時よりも走ったに違いないということです。

「・・・このOLは実在する」で締めくくられる四コマは、本当に笑えて、しかも暖かい。
普通他人の失敗やら不幸やらを笑うとき、人間は尊大になってしまってその相手を見下すような感じで見てしまうものですが、よしえさんの失敗とそのリカバーの仕方にはうならされたし、降りかかる不幸には、心から同情することが出来た。主任さんとのバトル(?)は、主任さんのキャラの不思議さと相まって爆笑シリーズでありました。

やがてよしえさんメインで、須賀原家の家族のことが描かれる『よしえサン』『よしえサンち』『よしえサン日記』は、夫婦や家族で出かけた旅行の話、ラーメンやお酒の話、匠くん、ツッくん、アユちんの成長物語・・・どれをとっても(月並みな言葉ですが)心が温まるいいお話でした。

・・・それらの温かいお話のいつも中心にいたよしえサンがもうこの世にいない。

残念で、悔しくて、信じたくない話です。

もちろん一度もお目にかかったことはありません。
なにかのときにマスクしたお写真だか、コミック表紙の折り返しのところに映っておられた後ろ姿だかを拝見したことはありますが。でもそれで充分でした。わたしにとってのよしえサンは、須賀原先生が紙の上で動かしてくださっていたあの人そのものでしたから。

「マンガの中で生き続けることが出来たら」
よしえさんは、こんなことをおっしゃっていたそうです。
先日の記事を書いたあと、わたしはAmazonでポチッをして、須賀原洋行先生の最新の単行本を3冊買いました。
『実在ゲキウマ地酒日記(1)』
『実在ゲキウマ地酒日記(2) 』
『よしえサンのクッキングダンナ』

『よしえサン日記』以降のよしえさんが、これらの作品の中にいらっしゃるのでしょう。
よしえさんの闘病生活についても少々触れられているそうです。
よしえさんが亡くなったことを知った今、これらの本を開くには覚悟が必要だと思います。
それでも私はページを開き、須賀原先生の作品を楽しませてもらおうと思っています。
私が大好きな実在ニョーボが、やっぱりそこに実在するでしょうから。

『気分は形而上』に始まる須賀原先生作の多くのマンガが私の書棚にあるかぎり、よしえさんは私の書棚の中にも生き続けているのです。

よしえさん、また、会いにいきます。

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by starforestspring | 2013-12-13 22:20 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『よしえサンち』

おひさしぶりです。
・・・私の中ではそんな気分ですので、読み流してください。

私、形だけFacebookに登録してるんですが・・・あの押しの強さっていったらないですよね。
「○○○さんをご存知ですか?」
ってなメールが頻繁に届くんですよ。
しかもその○○○さんが、たしかに私の知ってる○○○さんであったり、私の姪の名前であったり、昔一緒に仕事をしたことのある人の名前であったり。
なんていうかこう・・背筋に寒気を感じてしまいます。
もし私が、Facebookに頻繁にアップしてたりすると、過去に私となんらかの繋がりがあった方のところへ「gonbe5515さんをご存知ですか?」なんてメールが届くんでしょうか?

くわばらくわばら・・。



毎月恒例の『地獄の日々』を今月も無事乗り切ることができました。
最近よく使われる表現をお借りすると「イッパイイッパイ」な状態であるわけです。
こういう時に“キューピーコーワゴールド”という薬をお飲みになるかたもいらっしゃいましょうが、私は断然これです。
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ばかばかしさの中に感じることの出来る真理と言いましょうか、「そうそう、そういうことってあるよね〜」っていう親近感って言いましょうか、「よしえさん(ダンナさん)・・あんたって人は」ってツッコミを入れたくなるというか・・。
個人的に思うのは、“キューピーコーワゴールド”もいいでしょうが、『よしえサン』も負けちゃいないぞと。いや、ゼッタイこっちのほうが、疲れがとれるぞと。

夜中の3時に仕事を終えて帰ってきた50過ぎたオッサンが、着替えをして、酒を飲んで、歯磨きをして、ベッドに潜り込んで、そのまま寝ればいいものを『よしえサン』をベッドの中で何ページか読んでから寝る。この心理をね、わかっていただきたいものです。

ダンナとニョーボとこどもたち。
名古屋に住む漫画家一家のおかしくも不思議な日常。
注意して見てみると、ありえない絵ではあるのですが、気にせずに読み進んでいくと、それでなければ収まりがつかないように思えてしまうよしえサンの顔であったり、ネームと作画の締め切りに追われながらも、ラーメンを作るのにスープ作りからこだわってしまい大きな寸胴を買ってきてアク取りに励む“ダンナ”の様子であったり、ませたセリフの中にも、子供らしさいっぱいの子供たちの様子であったり。

癒される。

私にとってこの言葉が不自然ではなく当てはまるのは、このマンガだけですね。

『よしえサン』
『よしえサンち』
『よしえサン日記』

どれもお勧めです。


gonbe5515


これらの作品のモデルになられた作者の奥様(=ニョーボ)が、今年の10月に亡くなられていたということを知ったのはつい最近のことです。
ダンナとこどもさんたちの気持ちはいかばかりか。
家族を残して先に旅立っていかねばならなかったよしえさんの気持ちはいかばかりか。
『絶句』
こういう時に使う言葉なのか・・と、初めてわかったような気がします。

心からの感謝をこめて    合掌。

どうぞやすらかに・・・。
by starforestspring | 2013-12-11 19:19 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『じゃりン子チエ』

♪ひまわり模様の飛行機に乗り 夏の日にあの娘は行ってしまった
♪誰にもサヨナラ言わないままに 誰にも見送られずに
♪一人で空へ まぶしい空へ 消えてしまった ア~アアア~ア~アアア

井上陽水さんが世間をアッと言わせたアルバム『氷の世界』の中の一曲。
隠れた名曲と私は思ってる。
なんとも言えぬ“詩情”がこの曲にはある。
私の頭の中のチエちゃんは、細身で、背が高く、髪が長くて、ちょっとさびしい笑顔を見せる16、7才くらいの女の子であります。



そんなチエちゃんとは正反対のチエちゃんがこちら。
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私はそれを知らなかったのだけど、
このマンガが最終回を迎えた時、ある新聞のコラムに載ったらしい。
最終回を迎えること、それが事件であったわけですね。

このマンガも長期間連載されていた。
マンガ家のみなさん、誰しもそうだろうけれど、このマンガの作者はるき悦巳氏も、初期と後期とでは、チエちゃんの顔が変わってしまってる。チエだけではない、テツもヨシエさんも、小鉄もお好み焼き屋のオッサンも、みんな顔が変わってしまってる。後期のは、みんなが口をいつも開けていて、目線がどこを向いてるのかわかりにくくて・・・・正直に言ってしまえば初期のころの絵とは似ても似つかない顔になってしまってる。

ちょっとワケありの家庭環境の中でもたくましく生きるチエちゃん。
ホルモンを焼いてる時には商売人。串の数をごまかそうとするおっさんにもだまされることなくしっかり勘定を取り立てる。
ひとくせどころかふたくせもみくせもある近所の住人たちからも一目おかれる“日本一不幸な少女”

チエちゃんと近所の住人たちとの間で繰り広げられる大阪の日常は、不自然なようでいてとても自然に描かれていて、それが読む者の心になにがしかの安心感を届けたのではないかと思うのだ。

特筆すべきは小鉄、そしてジュニアの存在だろう。
ネコです。
二本足で立ち、ケンカのときは頭突きをかまし、ほうきとチリトリを持って店の前の掃除をし、時には!野球の試合でヒットをかっとばすのだ!

ありえない。
ぜったいありえない。
ネコがこんなことするマンガは、それ以外もありえないSFのような設定でなければならない。。
でも、チエちゃんはやっぱり毎日ホルモンを焼き、ヨシエさんはいつもうつむき加減に帰ってき、おばあはんは自転車でホルモンのネタを運んでき、テツはやっぱり寝てばかりいる。

そこにチエちゃんの日常がある。私たちと同じ日常を暮らしている。
チエちゃんと小鉄とは、ちゃんとひとつの世界で生きているのだ。自然に。

そんな不思議な世界をつくりあげたはるき悦巳という人は本当にすごいと思う。

gonbe5515

関西じゃりン子チエ研究会

by starforestspring | 2013-12-06 23:31 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『寄席芸人伝』

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落語を生で聞くことの出来る機会はそうあるものではない。
定席のある東京や大阪だったらいつでも好きな時に聞きに行けるが定席のない町では落語家のみなさんがわざわざやってきてくれる『公演』を待つしかない。
富山にも時々有名な落語家さんが来てくれるが、たいてい土日祝日に『公演』なので、聞きに行けるはずもなく。。。

よく言われることだけど、年食ったおっさん、おじいさんが舞台に座って、首を左右に振りながら微妙な声の違い、抑揚の違い、話す速度の違いで人物を描きわけ、話し続ける。その姿を見ているだけだったら、それはお世辞にも面白いとは言えないと思うのだけど、実際はそうではない。おもしろい・・のだ。

なぜなら、噺を語る人によって、噺そのものが変化するから。
同じ噺を同じ人が語っても、その日によっておもしろさが変わるから。

『らくだ』という噺を立川談志師匠が語るのと、立川志の輔師匠が語るのとでは別の作品になるわけです。先日私はCDで『地獄八景亡者の戯れ』を桂文珍師匠で聞いたのだけど、桂米朝師匠、桂枝雀師匠とは似て非なるものでした。

これと似た現象をみなさんよくご存知のはず。
そうです、クラッシック音楽の演奏と同じなのです。
モーツァルトの『フルート協奏曲』、指揮者によって変わります。どの楽団が演奏するかによっても変わります。同じ曲でも弾く人、指揮する人によって変わる。その違いを楽しむことがクラッシックの魅力の一つでもあろうかと思われます。

落語は話す人ではなく、聞く人がイメージを作っていく芸・・だそうです。
熊さん、八つぁんの顔とか、体格とか、ご隠居はどんな座布団に座ってるのかとか、「ばあさんや、お茶をだしておくれ」とご隠居に頼まれたばあさんが、どんな着物を着ているのかとか・・。登場人物全員の様子が、観客の頭の中で作り上げられていくのです。映画やドラマは見たまんまですから、自分も隣の人も同じものを観てます。主人公の顔に傷があるのは誰でもわかる。座ってる椅子の色は見ているみんなが同じ色と認識している。落語は観客の一人一人が頭の中で別々のイメージを作り上げていく、そこが違うのですね。

「聞く人がイメージを作っていく」と言いましたが、だからといって聞く人の側に責任があるのではないのです。クラッシックの指揮者が振るタクトによって音楽が変わり、感動も変わるように、落語も喋る人によって変わります。早い話、観客の頭の中にイメージを作りやすい話をしてくれる人と、そうでない人がいるってことです。聞いてる人をすぐに気持ちよくさせてくれる人と、できあがりそうになってるイメージを余計なくすぐりでなかなか完成させてくれない人と。
観客の好みもあります。相性もあります。私なんか、落語が面白いか面白くないか以前に、声の好き嫌いがありますから。#志ん朝師匠の声は好きだけど談志師匠の声は苦手


この本は、落語そのものと、落語をとりまく大勢の人のことを教えてくれます。
第一巻、写実の左楽。
ああ、なるほど。芸に生きるってこういうことなんだと、納得してしまう作品です。
古谷三敏先生の作品は、少ない線と省略された背景で描かれています。
私はそのコマの白いところ。余白の部分がとても好きです。
書き込みすぎない。だけど必要なことはちゃんと書き込まれている。そんなところが好きです。

お酒が好きで、落語が好きで、物知りで。
たのしいオジサンなんでしょうね。

『寄席芸人伝』全11巻。
お勧めです。

gonbe5515
by starforestspring | 2013-12-03 21:54 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『笑う大天使』

私がみなもと太郎先生や手塚治虫先生に持つ感情っていうのは、尊敬とか仰ぐとか、崇めたてまつるとかっていう言葉を持ってくればふさわしい表現になると思うのだけど、この方に対する感情をどう表せばいいだろう?

川原泉先生
この方は・・・この方は謎です。

冗談ではなく、頭の中がどんな構造になってるのか調べてみたい。
「普通、そんなこと誰も知りませんよ」っていうようなことを延々と語られたり、「そうか!そういう表現があったか!」と、“恐れ入りました”な文章を書かれる。かと思えば「だ、大丈夫ですか?」と心配してしまうようなトボケたことをおっしゃったりする。

本当に、この方はわからない。

読書量がすごいんだとおもいます。
川原泉先生の著作を何冊か持ってるけれど、そこで紹介されてる本っていえば、おそろしくマニアックであったり、いや、ちょっとこれは意味不明でしょう?っていうことが題名読んだだけでも想像出来るものだったり。

何年か前に私は「コマ送りにみる多部未華子さんの魅力」という記事の中で

>ふつうならA→B→C と流れで変化をつけるところを彼女は、
>Aの前にZ、AのあとにA'、Bの前にYとX、BのあとにB'とWを入れてそれからC。
>Z→A→A'→Y→X→B→B'→W→C
>こんな感じでAからCへの変化を表現する人のように思えてなりません。

っていうふうに多部未華子さんを言い表したことがありますが、川原泉先生もおんなじかもしれません。人とは違うのです。目のつけどころも、発想も、論理の展開も、言葉に対する感性も。

現象を、言葉を使って表現し、人に伝えようとするとき、人によって使える言葉の数は異なるし、その違いが表現のバリエーションになる。そのバリエーションは、少ないよりは多い方がいいだろうけれど、まったく的外れな、相手にその意が伝わらない表現ならいくらあってもないのと同じ。少なすぎるのはどうかと思うけれど、たとえ少なくとも他の誰も真似の出来ないような表現が出来る人は多いだけの人に優る。

川原泉先生は、「バリエーションが多くて」「他の誰も真似の出来ないような表現」を、ニコニコ笑いながら次から次へと、そのペン先から繰り出してくる・・そんな人なのです。

この方のマンガ(特に初期から中期)の特徴はそのネームの多さ。
まるで小説読んでるようなものです。
コマ割りも小さいしね。そこにネームが絵を覆い尽くさんばかりにあるんです。

小説読んでるような気分になります。
#そういえば『風雲児たち』も初期から中期まではネームばっかりのマンガでした。
かといって先生に小説書いてみませんか?とは言えません。
この方の真骨頂はストーリーと絵と文章表現の絶妙なさじ加減。
この三つが絡みあい、溶け合うことでかもし出されるえもいわれぬ不思議な世界。
これなのです。

その川原ワールドのひとつの到達点が
『追憶は春雨ぢゃ』
という作品だと私は勝手に信じてる。
脱力っていったら、これ以上脱力できる作品はありませんよ。


というわけで、『笑う大天使』です。
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この作品について多くは語りますまい。
以前『マリアさまが見てる』という映画のレビューの時にちらっと紹介させていただきました。
この作品のすごいところは、第一巻と第二巻が、第三巻の前座であるというところです。
つまりは第三巻が真打ち。
真打ち登場の前に場を温め、空気になじませ、集中力を高めておくという役割を担っているのです。
単体としてももちろん面白いです。でも全三巻のうちの第一巻、第二巻という位置づけでみたとき、そのおもしろさは単体で読むのとは比べものになりません。

古本屋にでかければ買うことが出来る・・・そう申し上げたいのですが、実は案外見あたりません。
『花とゆめ』コミックスは山ほど並んでるのですが、そこの作者名“か”行に、川原泉さんの作品はあんまり見あたりません。

思うに、
川原先生に惚れた人は、その作品を古本屋に売ったりしないのでしょう。
きっと当たってると思います。
私がそうですもの。ゼッタイ売りませんね。
何遍読んでも笑えて、新しい発見のある作品は稀少です。


gonbe5515


ブログ内を探ってみたら、自分でも驚くくらい先生について書いてました。
で、新しいカテゴリを作り、先生について書いた記事だけを入れました。
by starforestspring | 2013-12-02 21:01 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『火の鳥』

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この方の作品について書こうとすると手が震えます。
日本のマンガ界に絶大な影響を及ぼしたと言われ、そのことについて異存を唱える人は誰もいないだろうと思われる巨人、手塚治虫先生。
その代表作として必ず名前があがるのが『火の鳥』です。

影響を受ける。
こんなに簡単に表現していいのかしらと思うほど、この作品から私はいろんなことを学びました。
壮大な物語です。
展開される物語のスケールの大きさだけを指すのではありません。
昨日紹介した『風雲児たち』は関ヶ原から明治維新に向かう“スケールの大きな”物語ですが、あえて言えばそれは時間的なものにすぎません。『火の鳥』の場合、時間はもちろん宇宙やミクロの世界、人体内部など、空間的なスケールの大きさもあります。また、人間という動物に対する思索の深さ、観察があります。そしてなにより、この作品を読む読む者一人一人が自分の頭の中でこしらえていく世界の広さは、それこそだれにも測ることのできないものでしょう。

全巻読むのは大変ですが、そこらの映画を観るより以上に楽しめると思います。
コマ割り、セリフ、絵の表情、あらゆる面でこの方が「マンガの神様」と呼ばれた理由がわかります。
命とは?永遠とは?生きるとは?
普段使わない脳を使いますよ、このマンガは。

もし、まだ読んだことがないと言う方は、ぜひ手にとってみられることをお勧めします。
ご安心ください。この作品は町の小さな書店でも必ず置いていると思います。

懐かしい子供時代を思い出したのでついでに・・・
子供のころ、『鉄腕アトム』が始まる頃には必ず家に帰ってました。

♪そらをこえて ラララほしのかなた
♪ゆくぞアトム ジェットのかぎり

で始まるテーマソングを歌えない50代以上の子供はいないんじゃないでしょうか。
博士の大きな鼻、ランプの小憎たらしい顔、ヒゲオヤジのヒゲの長さとジャンプ力、ウランの可愛らしさ・・懐かしいですねえ。
そうそう、アトムが歩くとき、とてもおもしろい足音がしましてね。あの音が私にはすごく不思議でした。
  #文字で表そうとしてみたけど、断念。

『ジャングル大帝』で見たこともないアフリカの大地の広さや、人間の邪悪さ善良さに触れ、『W3』や『リボンの騎士』に心ときめかせ、『奇子(あやこ)』でドキドキし、『陽だまりの樹』で心穏やかに江戸の町を歩くことが出来た。
『火の鳥』はもちろんだけど、手塚先生のおかげで楽しい時代をすごすことが出来た大人は数多いに違いない。

手塚先生、ありがとうございました。

gonbe5515
by starforestspring | 2013-12-01 19:44 | 僕のマンガカタログ | Comments(2)

『風雲児たち』

幼い頃から神社やお寺で遊んでいると、自然と歴史に興味を持つようになります。
友だちもそれほど多くはなかったせいで、私は一人で出かけることがよくありました。話し相手がいないもんですから、そこにある樹とか、鳥居とか、仏像とか、しまいには羽目板とかをじっと見つめて、そいつが見てきたものに対して思いをはせる・・そんな子供でした。

ただ、私が見ていたものは、あくまでひとつひとつの“点”だったのです。
奈良時代は奈良時代。平安時代は平安時代。それぞれの時代にそれぞれの暮らし。学校の勉強でもそうじゃないですか。教科書で歴史に名を残した人たちの名前を覚え、功績を覚え。年表も勉強しますけど、あれを横軸で観ている人って、そんなにいるとは思えない>個人の感想 

「なくようぐいすへいあんきょう」
「いいくにつくろうかまくらばくふ」
「いやあろっぱさんめいじですがな」

こういうふうにひとつの事柄が起こった年を覚えていくだけ。
と言っても、自分が住んでる日本ですから、さすがに縦一列だけを単体で覚えてるってことはないですよね、なじみがあるから。だから多少はたのしめた。私が困ったのは世界史でした。ヨーロッパの歴史、アフリカの歴史なんてわかんないわけです。オスマン帝国がどうしたハプスブルグ家がどうしたなんて、イメージが結べない。想像がつかない。だからおもしろく思えない。>個人の感想

前置きが長くなりました。
そんな私の日本の歴史に対する認識に、冷や水をぶっかけたというか、目からウロコを落としてくれたというか、“興味”を“好き”に変化させてくれたのが、このマンガ『風雲児たち』であります。
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私はこの作品は、手塚治虫先生の『火の鳥』と並び称せられる資格が充分にあると、胸を張って申し上げたい。中学校の副読本にするべきだとさえ思います。

大谷吉継。
徳川秀忠。
前野良沢。
高野長英。
林子平。
渡辺崋山。
大黒屋光太夫。
最上徳内。
シーボルト。


授業ではあまり時間を割かれることのないこれらの人々が、まるでお隣に住んでいる人のように自然にこのマンガの中で暮らしているのです。
大長編です。
『明治維新を描くには関ヶ原から始めないと描けないと思った』
作者である みなもと太郎先生の言葉です。
私はこの言葉を読んだとき、なんとも言えぬ感動を覚えましたですよ。

とにかくすごいのです。
とにかく面白いのです。
ただ、全部読むのはお金もかかるし、時間もかかります。
大きな書店ならあるでしょうが、町のちいさな本屋では見つけられないかも。Amazonでの入手が賢いかもしれません。
全部はムリでも、田沼意次、前野良沢、大黒屋光太夫あたりは是非読んで頂きたいと思いますね。
『解体新書』にまつわるお話なんかもう、泣きますよ・・・。

ここで第一巻のなか身!検索ができます。

先にご紹介したのは私が読んでた初期のころの「希望コミック」の表紙です。
今はリイド社からSPコミックスで出版されてます。>現在進行形

gonbe5515

ついさっき、幕末編23巻を予約注文いたしました。
22巻が出てから何ヶ月経ったのやら・・
でも楽しみです。
by starforestspring | 2013-11-30 22:57 | 僕のマンガカタログ | Comments(0)

『男おいどん』

平成も25年。「昭和は遠くなりにけり」とつぶやいても不自然ではなくなった。
昭和。我々の世代には懐かしの時代。

昭和と平成。なにが違うのかを考えてみた。

夢とか希望とかいう言葉が似合う昭和、似合わない平成。
モノが足りなかった昭和、あふれかえってる平成。
活気があった昭和、粗暴になった平成。

昭和は・・・足りないモノに憧れ、手に入れることで満足感を得ることが出来た時代。
平成は・・・足りないモノがなく、あふれかえったモノを片っ端から処分していく時代。

家電。携帯。雑誌。食べ物。情報。。。
この時代、捨てられてしまうもの、捨てなければやっていけないものの、いかに多いことか。



『男おいどん』は、平成では嘘くさくなるものがたり。
昭和の御代であればこそ、成立するような気がするものがたり。

主人公、大山昇太。
短足近眼、貧乏不潔、失恋常習、不撓不屈、人畜無害。
四畳半一間に家具はなく、押し入れを開けたら大量のパンツ(サルマタ)があふれ出てくる。パンツの湿気と養分(?)で押し入れの中にはサルマタケなるキノコが生えており、彼は時々そいつをゆでて食べている。夢と希望を胸に抱いて東京の夜間高校に通っていたのだが、ふとしたことで会社をクビになり、学校にも通えなくなってしまう。

私がこのマンガを読んだのは中学生の頃。
食べるものがなく、水を飲んで紛らわす。寝坊したせいで約束したバイトをダメにする。昇太の暮らしぶりはとことん情けなかった。設定上私より年上であるはずの昇太に、中学生の私が憐れみの気持ちすらもったものだ。
#のちに短い期間とはいえ、私も似たような暮らしぶりになることを知らずに。

“男”であること。
これが昇太の信念であり、心のよすがだ。
パンツで埋め尽くされた押し入れの中には、彼が九州で大望をいだいていた頃着ていた学生服が祀ってある。折に触れ彼はその学生服に誓う。
「今にみちょれ。おいどんはこのままでは終わらんのよ」


このマンガは一話完結。
朝(もしくは昼)から始まり、夜、昇太が眠りにつくところで終わる。
その最後の一コマがとてもいい。
悔し涙にくれる夜も、酒で前後不覚になって眠る夜も、明日への希望にときめきながら眠る夜も、最後の一コマが眠る昇太をやさしく包みこむ。
#このパターンは作者松本零士氏の後の名作『銀河鉄道999』に継承されている。


このマンガは、夢と現実との違いを容赦なく読者に提示する。
大げさに書かれているようでも、本質的な部分は変わらない。
「とても悲しい」から“とても”をとっても、“悲しい”ことに変わりはないのと同じことだ。

夢と希望を胸に抱き、意気揚々と大都会に出てきた青年が、現実の壁に跳ね返されだんだん背中が丸くなり、うつむき加減に歩くようになる。下を向いて歩くようになれば、もう上を見上げることはしない。抱いてきた夢も、希望も、遠い昔の思い出にしてしまう。
「あの頃はオレも若かったよ・・」
酒を飲みながらそんなセリフを口にする、そんな分別くさい“大人”になる。
多くの青年はこっちのパターン。

しかし、大山昇太は違う。
人にバカにされ、ダメな男と罵られ、ケンカで負け、失恋を重ね、今日食べるものすらない暮らしの中でも彼は「今にみちょれ」と希望を失わない。

なにを根拠に?
なにを頼りに?
おまえ、全然アカンやん!
言うてることと現実とが、月と地球ほどにかけはなれてるやん!

そう思う。そう言いたくなる。

それでも、大山昇太は諦めない。
さすがに今度は・・・という時でも諦めない。
泣きながら眠っても、明日はなんとかなると思っている。

倒されても倒されても立ち上がってくるボクサーが歓声と拍手を浴びるように、昇太は読む者の共感をつかんでいく。


・・・・・・・
大山昇太は情けないヤツだけど、すごい“男”なのです。
最終回、彼の未来は提示されません。
しかし、彼と関わった人たちが「いつかあいつは帰ってくる」と彼の帰りを待ちつづける。
そのことに、彼の値打ちを知ることが出来るのです。

gonbe5515

久しぶりに読み返しています。
平成の世になんと似合わない作品であることか!
by starforestspring | 2013-11-28 22:37 | 僕のマンガカタログ | Comments(2)


タベリストgonbe     よしなしごとつづり


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