多部未華子さんの関西弁があぶり出す甘酸っぱい思い出。。それから坂口安吾

昨夜、『浪花少年探偵団』の録画を二度見しました。
>もちろんみなさんはもうお済みですよね?

初回はあれよあれよといううちに終わってしまいましたが、二度目となると、落ち着いて周りを鑑賞することができます。多部未華子さんの関西弁も。言葉は本来情報の伝達手段、記録手段だと思うのですが、こと私にとっての関西弁は、思い出をあぶり出す触媒みたいな働きをするようです。
鶴瓶さんやさんまさん、文珍さんや三枝さん(文枝襲名、おめでとうございます)のしゃべりを聞いてもこんな風に感じないのに、なぜ多部未華子さんだと?
たぶんそれは、多部未華子さんが女性だからです。>あたりまえの答えで申し訳ない。
女性が喋る関西弁に私は反応するみたいなのですね。誤解のないように言っておきますが、久本さんの関西弁にも反応しましたよ。少しだけですけど。

いったいなにに反応するかと言えば「あかん」なのです。笑われてしまうかもしれませんが、関西の女性がこの言葉を発するだけで、私は一種独特の気分に襲われてしまうのです。
「あかん」を標準語に置きかえると、「だめ」とか「いけない」になると思われます。
「どうやらだめみたいです」→「あかんみたいや」
「二度とこういうことをしてはいけない」→「もうこんなことしたらあかんで」

いやその、言語について解説したいわけではなくて・・。

戻ります。

番組の途中で、しのぶ先生が神社の横の狭い空間(福島親子が車を突っ込んでたこ焼きを売ってた場所)をじっと見つめ、やがてこういいます

「あかん!これはあかん!そんなことしたらあかん!」

#それから彼女はアパートに向かって走り始め、ドアの前で福島に語りかけます。
#ここからあとのしのぶ先生、じつによかったですよね。

しのぶ先生のこの言葉で私は、お恥ずかしいのですが、なんだかとても“萌え”ました。

関西女性の発する「あかん」という言葉は、素敵な響きと、甘酸っぱい思い出と、少しの後悔とを伴う私にとって特別な言葉です。

………

いつもならこれで「本日の分」は終わりなのですが今日は調子に乗ってもうひとつ。

私は子供の頃からとにかく本を読みまくってきて、中身はともかくその冊数だけはそれなりに胸を張れると自負しているのですが、あえて避けてきた作家の一人に坂口安吾氏がいます。
自分でもなぜ彼の作品を避けてきたのかがうまく説明出来ません。しかし、なぜだかここ二三日で、一度は読んでみたい。いや、読むべきだ。。。急にそういう思考がわいてきたのです。

で、今日書店に出かけました。
坂口安吾と言えば・・・『堕落論』ですか?
太宰治と言えば・・・『斜陽』と言われるのがあたりまえになっているような空気がありますが、太宰イズナンバーワンの者から言わせれば、「それだけじゃない!斜陽だけを取り上げて太宰先生を語ってくれるな!」というちょっと口惜しいような気分になるのですが、坂口安吾イズベストの方もきっとそうに違いありません。

が、ご当人をよく知っていない者からすれば、広く知られた作品から入っていくのは自然な道筋。そう思って新潮文庫の中の『堕落論』を棚から取り出しました。(私は文庫本を探すとき、新潮から探し始めるタチなのです)

手に取り、ページをぱらぱらと送っていく。左から右に移動していくページの中に“太宰”という語句が目に入る。あわててページを戻し、探す。
『太宰情死考』
太宰治氏のいわゆる情死についての坂口安吾氏の私見。
一気に読みました。
読み終えて私は、
私は、実に実に嬉しかった。
これまでずっと胸の奥の方に、澱のようにたまり、時間を経てボコボコと泡を吹き出しているようなもの。
そんな彼の最期について、坂口氏の考察は本当にありがたかった。

『作品がすべて』
最後の部分にこの言葉が出てきます。
黒澤監督も同じことを言っておられた。
「とやかく説明してもダメなんだから。シャシンをみればわかるんだから。シャシンの中に全部あるんだから」
私もこの言葉をずっと信じ続けてきました。


信奉する太宰治さんの人生について、そのスキャンダラスな死について、世間一般の興味本位“的”な解釈を一刀両断にし、かつ
「作品がすべて」
こう言い切った坂口氏の言葉に、私は救われた思いです。

gonbe5515

次回はパンダ出産について?
荒れる予感・・・・。
by starforestspring | 2012-07-06 19:02 | 多部未華子さん | Comments(15)
Commented by hyoutangaiden at 2012-07-07 00:16 x
太宰はイメージだけで嫌いでした。若い頃から。
ところがたまたま読んだ芥川比呂志さんのエッセイに太宰が登場するんです。太宰の作品を上演させてほしいと頼みに行くんですが、そこで出くわす太宰は…どう見てもいい人です。

ガラガラと自分の持っていたイメージが壊れました。今は再考中です。

作品がすべてですか。読めるかなあ。
Commented by かわたべ5678 at 2012-07-07 12:38 x
女子の関西弁萌え、大賛成ですw 『王様のブランチ』で谷原さんが多部ちゃんに「あほー」って言われて悶絶してましたが、物凄く共感しましたw 「ばか」よりも「あほー」ですよね!

『火垂るの墓』は賛否両論あれど、泣けるのは女の子の関西弁によるところが大かと思います。男だと可愛くも何ともないのに、不思議です。
Commented by もりあて at 2012-07-07 13:55 x
「あかん!これはあかん!そんなことしたらあかん!」

この言葉から、「浪花少年探偵団」は転がり始めたような気がします。
それまでは人物紹介と小ネタの積み重ねで・・・
同時に多部ちゃんの中に関西弁やしのぶセンセが自然と入り込み、
福島クンとの会話「ウソついたらあかん」まで一気に見せてくれた
ように思えました。このドラマ、どんどん良くなる予感がします。
Commented by starforestspring at 2012-07-07 14:02
>読めるかなあ。
答えにはならないかもしれませんが、ひとつだけ。
太宰氏は作品と人格や暮らしぶりとがイコールであると多くの人に認識されているように思います。パビナール中毒の主人公を書けば、本人がそうだからだろうと。実際そうではありましたが、だからといって中毒患者の発する世迷い言を、太宰氏の本心として解釈するのはいかがなものかと私は思うのです。
彼は作家でした。小説を書いて原稿料を稼ぎ、それで家族を養ってました。小説と作者とを別々のものとして意識したとき、私はそれまで以上に太宰治という作家が好きになりました。
Commented by starforestspring at 2012-07-07 14:06
女子の関西弁は萌えますよね。
ご同輩がいらっしゃってよかったです。これで一安心>なにがだ・・と。
関西弁に囲まれて暮らしていた私は、なにがなんでももう一度関西弁に囲まれて暮らしたいと熱望しております。
リタイアしたら、必ず京都に戻るつもりです。
Commented by starforestspring at 2012-07-07 14:07
>転がり始めたような気が
そうですよね、やっぱりあそこですよね。
あの叫び声が浪花少年探偵団スタートの号砲だったのかも。
これからどんなふうに私たちを楽しませてくれるのか、本当に楽しみです。

Commented by NABE at 2012-07-07 20:40 x
坂口安吾は晩年を桐生で過ごしました。
往生した場所は、西桐生駅から1キロも離れてないといます。
Commented by yamarine0125 at 2012-07-07 20:59 x
太宰としのぶセンセが錯綜していますが、私も太宰は大好きです。
その関連で、安吾と井伏も文庫で読めるものはほとんど読みました。

まあ、いずれも人生のダークサイドに惹かれるモノが好む作家かなって思いますね。
Commented by starforestspring at 2012-07-07 23:28
>往生した場所は、西桐生駅から1キロも離れてない
え?そうだったんですか?
坂口安吾を読もうという気になる前に、かすっていたんだ・・・。
Commented by starforestspring at 2012-07-07 23:32
>人生のダークサイドに惹かれるモノ
太宰氏自身は明るい小説、クスッと笑える小説も書いておられますが、ダークサイドなイメージを決定づけているのは、あの写真だと思います。頬杖をついて、斜め下に視線を送ったあの物憂げな表情の写真です。ルパンで撮った写真みたいなのばかりだといいのに・・・。
Commented by hyoutangaiden at 2012-07-08 09:26 x
>『太宰治情死考』

ありがとうございました。坂口安吾は一度も読んだことがなく、また足がかりを与えていただいてうれしく思います。

以前に三島ファンの人に何か読めといわれて「夏子の冒険」というのを読んだといったら、あまり本筋とはいえないらしくガッカリされたことがありました。

同様に太宰ファンをがっかりさせるのも気の毒かと思って言いませんでしたが、高校の教科書だったか、「畜犬談」が載っていて、私は作者の視線が好きでした。

芥川比呂志さんのエッセイに出てくる太宰は、初対面に「芥川って、あの芥川か?」と驚き、宴席で縮こまっている比呂志さんに話しかけ、父親龍之介について言う言葉にも気遣いと優しさが感じられました。

>作品がすべてゞある
芸道において、そのとおりでしょうけど、演じたり書いたりしている人が好きになれたら、もしくはなれなくてもその人に何かを感じることができたら、もっと嬉しいと思います。

タベリスト諸氏だって、多部ちゃんの「作品」がすべてだなんてカケラも思っていないでしょう?

Commented by starforestspring at 2012-07-08 14:27
>芥川比呂志さんのエッセイ
hyoutangaidenのおっしゃるこのエッセイを、私も読みたくなりました。
昨日、書棚の“太宰治コーナー”を久しぶりに眺めてみました。もうボロボロになってる文庫本やしっかりした装丁の単行本、写真集等々、一冊一冊に思い出が詰まった本ばかりです。私はいい小説家に出会えてよかったです。何事も完璧で、あがめ奉るような存在とはほど遠いんです。酒飲みで、女にだらしなくて、わがままで、見栄っぱりで、ぬぐえないコンプレックスもあって。。
でも、憎めない・・・そういうお人柄のようにお見受けしております。

>多部ちゃんの「作品」がすべてなんてカケラも思っていない
多部未華子さん自信が作品ですね。存在そのものが崇拝の対象です。私にとっては。

ちょっと“信仰”が入っちゃってるかもしれません。。。
Commented by hyoutangaiden at 2012-07-08 15:25 x
>"信仰"
私も信仰入ってますおそらく。願わくは”弟子”でありたいとwでも”弟子”であり続けようとするのは思いのほか難しいことですw

>芥川比呂志さんのエッセイ
おっと、出典を忘れてましたね。
「ハムレット役者」です。講談社文芸文庫。太宰の部分は数ページなので立ち読み楽勝です。
Commented by starforestspring at 2012-07-08 15:48
誤字発見

多部未華子さん自信
  ↓
多部未華子さん自身

小学生並みで申し訳ない。m(_ _)m
Commented by gonbe5515 at 2012-07-10 08:12 x
>「ハムレット役者」
読みました!(太宰さんの部分だけ)
なんだかとても面白そうな本ですね。
昨日は買いませんでしたが、購入予定リストに入れておきました。
名前
URL
削除用パスワード


川面を見つめて時の流れを知ったタベリストgonbe     よしなしごと残日録


by starforestspring

検索

カテゴリ

全体
雑感
それでいいのか日本人
国旗国歌についての私見
       
京都
映画・テレビ番組

サッカー
多部未華子さん
京都橘 オレンジの悪魔たち
       
お酒の話
思い出
食べものについて
韓国にまつわるエトセトラ
コミック名言集
サロメ計画『サロメ』
八尋計画『私を離さないで』
連続テレビ小説『つばさ』
映画『あやしい彼女』
北の国から
 
太宰治さん
川原泉さん
永六輔さん
 
男と女その摩訶不思議な関係
世界の中心で、愛をさけぶ
白夜行
連続テレビ小説 マッサン
連続テレビ小説 カーネーション
連続テレビ小説 あまちゃん
  
ディズニーランド
音楽
僕のマンガカタログ
時事
美術
USJ

Link

最新のコメント

sanaseさん、お久し..
by starforestspring at 07:20
その時間帯、どこにいらし..
by sanase2013 at 10:14
熊木さん、おはようござい..
by starforestspring at 05:50
正確には枚方市駅ですかね?
by 熊木 at 20:46
はい、呼びました!san..
by starforestspring at 19:13

記事ランキング

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月

ブログパーツ