『野茨と鳩』

さださん風に言えば、“あの頃という名の駅で降りて、昔通りを歩いて” しまった昨日の記事。
読み返してみると、消してしまいたくなる衝動も少し。
どうもこうなんというか、“こういう風にしか表現できない”自分がちょっとイヤになります。


先日購入した『東野圭吾公式ガイド』を読んで、『天使の耳』『白夜行』の文庫本を買いました。
 #『麒麟の翼』『プラチナデータ』は文庫で出てなかったので。

『天使の耳』交通事故を題材にとった短編集。
最近、覆面に追いかけられた経験を持つ私には、ちょうどいい本。
(いや、あれから私の運転は劇的に変わりましたよ。自分でも驚くほど)
でも作品そのものは、ちょっと物足りなかったかな。
『白夜行』は梅ちゃん先生が主演で映画にもなっています。

公式ガイドブックによると、東野さんは売れない時代が相当長かったそうです。
いわゆる“不遇の時代”っていうんですか?結構つらい思いもされた様子。
現在の東野さんは、東野さんご自身が、自分の才能を見限らなかった結果だと思います。


『白夜行』に心打たれれば、また次の本を買うつもり。




さて、今朝いつものとおり愛犬と散歩に出かけました。
もうすっかり暖かくなったので、冬の頃のようにもっさりとしたコートを着ていく必要はないんですが、習慣とは恐ろしいもんで、そのもっさりとしたコートが手放せないのですね。はたからみると気温と服装とが全然あってない妙ないでたちだと思うんですが、当人はこれでなきゃいけませんって感じになってる。
おもしろいもんです。

私はいつもiPodで音楽を聴きながら散歩しています。
今日聴いた曲は、高石ともやとザ・ナターシャセブンの『野茨と鳩』『再会』『君眠る丘』

このグループの歌は、ひとつのジャンルではくくりきれないところがあります。
多部未華子さんが、作品によって演技を変え、印象を変えるように、彼らの歌も曲により印象が変わる。
同じグループの曲とは思えない・・そんなところがあります。
それは、彼らのもつ音楽性というものはもちろんですが、彼らをとりまく大勢のミュージシャンたちから受けた影響というものを、彼ら自身に取り込み、アレンジした結果とも言えるでしょう。


今朝はいいお天気でした。
うららかな・・という言葉が似合いそうな、とてもあたたかな朝でした。
でもこの三曲を聴いていると、なんだか秋の夕暮れにたたずんでいるような気になってしまうのでした。もっさりとしたコートが似合う、秋の夕暮れに。
そしてその妙な感覚が、不思議に心地よく。。。

そんな朝でした。


以下に『野茨と鳩』の元になった北原白秋の詩、『野茨に鳩』を貼っておきます。


『野茨に鳩』

おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 春はふけ、春はほうけて、
 古ぼけた、草家の屋根で、よ。
 日がな啼く、白い野鳩が、
 啼いても、けふ日は逝つて了(しま)ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 庭も荒れ、荒るるばかしか、
 人も来ぬ葎が蔭に、よ。
 茨(ばら)が咲く、白い野茨が、
 咲いても、知られず、散つて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 何を見ても、何を為(し)てもよ、
 ああいやだ、寂しいばかりよ。
 椅子が揺れる、白い寝椅子が、
 寝椅子もゆさぶりや折れて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 日は永い、真昼は深い。
 そよ風は吹いても尽きず、よ。
 ただだるい、だるい、ばかり、よ、
 どうにもかうにも倦んで了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 空は、空は、いつも蒼い、が、
 わしや元の嬰児(ねんね)ぢやなし、よ。
 世は夢だ、野茨の夢だ、
 夢なら、醒めたら消えて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 気はふさぐ、身体は重い、
 おおままよ、ねんねが小椅子、よ。
 子供げて、揺れば揺れよが、
 溜息ばかりが揺れて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほrほろ。
 昨日まで、堪へても来たが、
 明日ゆゑに、今日は暗し、よ。
 人もいや、聞くもいやなり、
 それでも独ぢや泣けて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 心から、ようも笑へず。
 さればとて、泣くに泣けず、よ。
 煙草でも、それぢや、ふかそか、
 煙草も煙になつて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 春だ、春だ、それでも春だ。
 白い鳩が啼いてほけて、よ、
 白い茨が咲いて散つて、よ、
 かうしてけふ日も暮れて了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 日は暮れた、昔は遠い、
 世も末だ、傾ぶきかけた、よ。
 わしや寂びる、いのちは腐る、
 腐れていつかと死んで了ふ。

 おお、ほろろん、ほろろん、ほろほろ、
 おお、ほろほろ。
 ほろほろ、ほろろん、
 おお、ほろほろ。……


『水墨集』「野茨に鳩」


gonbe5515
by starforestspring | 2012-04-15 16:03 | 音楽 | Comments(0)
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